竜の爆誕シフォンケーキ風味

2/6
433人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
"世界樹"を中心とした森の中には、野生の動物が確かに棲息しているけれど危険なのはいない。大型動物で"黄金の鹿"とか"目出度い山猫"がいるけど人懐こいので驚異ではない。 人間の世界には凶暴な魔物というのがいるそうだ。でもエルフの森に魔物はいない。よって、森の端まで行くのに私一人でも大丈夫だよとシャドランに主張してみたけども…。 「却下。そういうのは一人で魔物退治できるようになってから言え」 「その魔物がいない森でどうやって退治しろってのよー」 「だから村から出なければいいんだ。この村は平和だよ。出る必要なんてない」 そう言われちゃうとそうなんだけどね。 私は人間の町にも行ってみたいし、旅とかしてみたいのだ。 そして何よりフィンブェナフさんに会いたいのでトレアスサッハの家くらいは一人で行かせてもらいたい。 これを言ったら怒られそうなので言わないが…。 「森には"惑わしの精霊"もいるし、ハイエルフ様の結界だってある。 神殿まで一本道だけど、大人が一緒じゃなきゃ駄目だ」 くうう。本音は言ってないのに注意されまくった。 私のお目付け役は厳しいです。 「シャドランお仕事は?」 「帰ってからやるよ。何より君のお供をしないとね」 仕事より私を優先とか。 恋人に言われてみたい台詞ナンバーワンだね。 「そう言えばシャドランは恋人いないの?」 「子供が余計な詮索すんな」 ああ、いないのね。おかしいね。村長の息子だし、仕事も真面目にするし、良物件なはずだけどねえ。本人にその気が無いのか浮いた話を聞いたことがないわ。 「子供だけど子供じゃないもん。恋に興味を持つお年頃だと微笑ましい目で見てもらいたいものでーす」 「どう見たって子供だろうが。幼児体型だし」 「むかっ。エルフは皆ペチャパイだもん」 「そんなこともないぞ。ボインもいる」 「え…エッチ!シャドランはボインが好きなんだ!」 「ナイよりある方がいいな」 「…男の人ってそうなの?」 「人によるだろ。…フィンはどうだろうなあ」 うう。もしボイン好きなら私は圧倒的不利! は、早く大人になりたい…! そんなくだらない会話をしつつ惑わされずに(・・・・・・)一時間ほど森の中を歩けば"勇者の神殿"が見えてくる。なぜ"勇者の神殿"かと言うと、一万年以上も昔には"勇者の魂"が安置されてたんだって。今は無いらしいけど。今はハイエルフ様の住処になっていて、旅好きなハイエルフ様の留守を守るような形で神殿司祭の役はできた。 だからお父さんの役目も基本はお留守番なんだよねー。 あと、ハイエルフ様が持ち帰った文献とかの整理や写本作りなんかもあるみたい。 一週間の常駐後、次の常駐当番までの間は家で書き写し作業とかしてるのを見たことある。コピー機ないから大変だよね。それ以前にコピー用紙が存在しないけど。羊皮紙は高いし、庶民は安価な雑紙を使う。でもこれ質が悪い。悪すぎる。 現代日本のような綺麗でつるつるした真っ白なコピー用紙なんかあるわけもないのだ。 ひとつひとつ手書きで、貴重な文献を羊皮紙に書き写すんだって。 気の遠くなる作業だね。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!