☆終戦の一歩

1/3
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ

☆終戦の一歩

 しばらくの間、僕はシスターを抱きしめ、慰めた。雨くんの魂が僕の中にいるということを感じられて僕は安心するとともに謝らなければいけないと思った。だから心の中で雨くんに話す。 「ごめんね雨くん。こんなに体、もこもこのボロボロにして」  心の中でも僕は目を合わせられなかった。無我夢中に戦っていたから、これが最善と沢山血を流してフェロモン駄々盛らせて、好き勝手性に溺れていた。  心の中で雨くんはしゃがみこんで、目を反らす僕の頬を両手でつかみ視線を合わせる。ぼーっとした無表情の雨くんが、にへらぁとほんのりと笑っている。僕の心が温かくなる。 「うんん、僕、もこもこ好きだよ。後で返してくれるんだよね」 「返すよ、雨くん……」 「わかった。頑張ってうさぎくん、みんなを守ってね」 「うん……守れたらいいなぁ……」  雨くんがきゅっと僕を見つめなおし、目と鼻の先まで近づく。そして僕の鼻先にキスをしてふふっと笑った。 「守れたらいいなじゃないよ、うさぎくんなら守れるよ」  不意打ちのキスに心が蕩け、大儀とかそういうものが抜け落ちてしまう。僕は英雄になりたいとかそういう大それたことを成し遂げたいわけじゃなくて、ただ好きな人と一緒に居たいだけなんだ。 「…………また一緒にキスしようね」  雨くんはかわいく首を傾げて、僕のうさ耳元で囁く。 「帰ってきたらしてあげる」 「約束だよっ……………」  僕は目を瞑ると、雨くんと一時のお別れをした。多分まだ会えるけど、雨くんが心の奥で膝を抱えて眠ってしまった気がしたから、起こしてしまうのはかわいそうだと思った。  僕がシスターから離れると、シスターは寂しそうに僕を見つめたがすぐに真剣な表情に戻った。 「ありがとう……うさぎくん」 「僕こそ、もっと早くこうして上げられたらよかったのに……」
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!