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空で眠る黒い猫
エメラルドの様な服と金色の髪の毛のサジタリウスちゃんに連れられて僕ではない私は、歩いたことのない『エデン』を案内される。
「えへへぇ……うさぎくんもアクアちゃんも置いて抜け出しちゃったぁ……」
白い宮殿の様な内装に感動と嫌悪を感じながら、さっきの余韻が残っていて夜風が気持ちいい。そう、お楽しみに夢中になってしまっていて、すっかり夜になってしまっていた事に今気が付いていた。
「あの……僕を何処に連れて行くのかな」
サジタリウスはにやりと微笑みながら振り向き、私をぽんぽんと撫でる。
「無理しなくていいんだよー、僕っ子だったらそのままでいいけどっ」
「ぼくっこ……?」
「えへー、違いそうだねー……」
変なことしていないのに心がくすぐったくなる。この子に何が見えているのか、私には何となくわかるから、打ち解けたら少しは楽になるのかなと想像する。
「……私は、何処に連れてかれるの?」
「すぐにわかるよっ リブラに感謝してね」
エデンの階段を下り、たどり着いた一室には天使が眠っていた。
「これって……」
「ふふっ、考えて」
うさぎくんと同い年くらいの天使。髪は黒いショートヘアで……
手先に私の手をかざしてみると、すごく良く似ていた。
さっきまでの火照りが抜けてしまうくらいの寒気で、罪悪感が湧いてくる。
顔をサジタリウスに向けると、翼を軽く仰いだ。
「辛い事言っていいかな」
サジタリウスは静かにそう言うから、私は覚悟を決めてうんと頷いた。
「よかった、よくないかもだけど…………ねこくんは死んでしまったの。でも魂だけはガーデンに取り残され、あなたと混ざり合ったの」
サジタリウスはゆっくりと私に近づき、翼と一緒に抱きしめてくる。
脇腹に腕を通して、背中に人差し指を当て、ツーっとなぞる。
「名前、まだ聞いてなかったよね。教えてほしいなぁ」
「…………たぬき」
全身がゾクゾクする。呼吸は荒くなるけれど、口は開けられない。開けたら悪魔臭い私を嗅がれてしまいそうだったから。
「たぬき……ねこくんを食べた悪魔もたぬきと言うらしいね」
息を飲む。目を瞑る。尻尾が痺れ猫耳がぺたんと垂れる。
あれはステンノ様のせいなんだ、あれはパトラッシュのせいなんだ、あれは……あの時の私は……!!
「食べちゃった魂を、今返す時だよね」
「いやだ……!!」
考えるよりも先に声が出た。
生きたい。
それが私の願いで、願望だった。
だから、天使の魂を手放すのは嫌だと思った。
思ったけれど……私は後悔ばっかりだよ。
小さな村で、お父さんとお母さんと一緒に暮らしていた。
あの頃の幸せを取り戻したくて、頑張っていたけれど……何処で間違えたのかな。
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