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まさかお酒だなんて思っていなかった。グラスを口に付けた時プンとアルコール臭がしたのは気のせいじゃなかったんだ。
それがお酒だと分かった時でもミイナは飲み続けていた。別に酔っても構わないと思ったからだ。どうせ明日の予定だって何にもない。だがしかし、これにお酒をいれたのは誰なのだろう。一番先に頭に浮かぶのは2つ上の兄だがいったい何のために・・・
ミイナはフラフラとしながら隣の部屋をノックしに行った。
「はーい」
兄は気だるそうに返事をした。窓が開いていて秋の虫たちの鳴き声がキリキリと聞こえてくる。
「入っていい?」
「ああ、いったい何だよ」
「お酒をペットボトルに入れたでしょ」
「はあー、何言ってるんだ?」
兄はそう言うとポケットに手を突っ込んだまま、身体を使ってドアを閉めにかかった。そうはいくもんか。ミイナはそう思って同じようにポケットに手を突っ込んだままドアを押し返した。
「わたしを酔わせようとしたって無理らからね」
「ハハハ、そんなこと言ったって呂律が回ってないじゃないか」
ミイナはハッと自分の口を押さえる。兄がニヤニヤ笑う。
「酔ってるんだったらちょうどいい。その勢いで俺の彼女に電話して言ってやってくれよ」
「ん、なんれ、わたしが、なんの為に?」
「浮気してるっぽいからさ、俺、聞くのが怖くて言い出せないんだ」
なんたる小心者!まさかそれが目的でペットボトルにお酒をいれたんじゃあ。
「あー、でも一応言っておくがペットボトルに悪戯をしたのは俺じゃあない」
んん、じゃ、誰が。まさか母の仕業か。母は子供っぽいところがある。父の可能性も捨てがたい。父は何時もお酒を酌み交わす相手が欲しいと言っていた。ああ、我が家は全員が怪しい。
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