第一印象

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「実はおれも、このドラマのオファーがきた時は、その…、迷ったんです…」 ハーブティーを飲みながら話をしていると、雪永はそう言って困ったように笑った。 「でも、相手役があなただと聞いて…」 「え」 言われて驚く。 まさか、彼も俺と同じ理由で引き受けていたのか。 「とても繊細な演技をされる方だと思っていました。それでいて、とても深い芝居です。見ていると、胸の奥の方に訴えかけられるものがあります。表面だけじゃないメッセージ性があって面白い」 ハーブティーを見つめながら独り言のように話す彼は、次にはハッと我に返って慌てだした。 「あ、す、すみません…っ。おれなんかが、生意気言って…っ」 「……いや、別にそれは構わないが」 本当に不思議な子だ。 俺の芝居について静かに語る姿は、また新たな彼を見ているよう。 コロコロと雰囲気の変わる彼に、心を振り回される。 こんなことは初めてだ。 「幸さーん。飲み会って参加するんですかー?」 すると向こうから松尾が呼びかけてきた。 それに思わず舌打ちしたくなる。 今は雪永と話しているっていうのに あいつは空気を読むことができないのか。 「えっと…、じゃあ、おれはこれで…。あの、今日はありがとうございました。 また、よろしくお願いします」 気を遣ったのか、そう言って背を向ける雪永に咄嗟に声をかける。 足を止め、こちらを振り返った彼に俺は口ごもった。 まいった。 こういう時、どう言っていいのか分からない。 初めて自分の社交性のなさを呪った。 あの、その…と言い淀むこちらを雪永はきょとんとした顔で見つめてくる。 するとまた松尾が呼ぶ声がして、俺は殆ど投げやりになって切り出した。 「また今度、飯でもどうだ」 「へ?」 ぽかーんと口を開けてこちらを見つめられる。 しかし次にはどこか照れたように笑って、彼はコクリと頷いた。 「はい、喜んで」
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