抱く感情

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「あ、そうだ片岡さん」 「幸でいい」 「…え?」 急な返しにぽかんとする雪永を眺める。 この感情は、なんなのだろう。 暖かくて、心地いい。 いつまででも、その姿を見ていたい。 側にいたい。 急激に強くなっていく思いに、自分自身困惑する。 固まっていた雪永は、やがて我に帰ったようで、口をパクパクしていた。 そして照れ臭そうに顔を赤らめて、口を開く。 「あ、じゃ、じゃあ…、幸、さん…?」 へにゃりと笑って俺の名を呼ぶ彼に、 ドクンと心臓が鳴った。 その時に気づく。 あぁ、そうか… これは… この感情はきっと、恋と、呼ぶのだろう。 「千里…」  「!?な、なんでしょうか…」 「いや、呼んでみただけだ」 「呼んでみただけだ…!?」 忙しなく表情を変える彼に、可笑しくなってくる。 「もしよかったらだが、下の名前で読んでもいいか?」 「っ、あ、はい、その、……どう、ぞ」 両手でカップを持ち、チビチビと飲み出す千里に、 俺はフッと笑みを浮かべ、同じようにハーブティーを口に含んだ。
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