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 翌朝、愁は早起きをして美代と一緒にお参りに出掛けた。手には作ったばかりの団子。昨日たーさんのおかげで無事に美代の家へ戻れた愁は、美代に明日、自分もお参りに行きたいことを伝え、さらに団子の作り方を教えて欲しいと頼んだ。 「そのだんご粉に水ば少しづつ加えて、耳たぶくらいん硬さにするったい」 「……これくらいですかね?」  ボールの中で練っただんご粉の弾力を確かめながら美代に尋ねる。 「うんうん。それからカライモんふかしたんばつぶしたアンばくるむ」  丸めたアンを平らにした団子の生地に乗せ包み込む。愁の作った団子はアンがわきから飛び出したり、上手く丸まらなかったりと不格好だったが、数を作るごとに見られる形になっていった。 「蒸し器ん下段にたっぷり水ば入れ、上にクッキングシートに乗せただんごば並べ、鍋蓋ばしたら、二十分くらいで完成ばい」  できただんごは砂糖を使ってないのでかなり甘さ控えめだった。しかし蒸したばかりのもちもち感は愁をとても豊かな気持ちにさせた。  たーさんもきっと気に入ってくれるだろう。  団子を作ったあと、慎二からまた電話があった。可愛らしいプレゼントへの礼を言い、温泉は「一人で入る勇気がなかった」と誤魔化した。もちろんあの不思議なたぬきとの出会いも秘密にした。  話しても信じてもらえるわけがないもんね。  そんなことを考えながら、だんごをお供えして美代と一緒に手を合わせる。 「霧の神様は怖い神様なんですか?」 「言い伝えによると、阿蘇大明神に仕ゆる鬼様鬼八(キハチ)は、大明神が矢ば射る時に矢取りん役ばつとめとった。大明神が射た矢ば拾うて返すことば繰り返しよるうちに鬼様は疲れてしまい、足で蹴り返したげな」 「蹴り返したんですか……」
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