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 慎二はどんな子供だったのだろう。きっとやんちゃで元気いっぱいの男の子だったに違いない。今よりちょっと若い美代ばあちゃんを手こずらせたんじゃないかな。  楽しい空想に浸り、しばし沈黙が縁側に流れる。それから先ほどの言葉を思い出し、のんきに寝転がっているたぬきを見た。愁の眉間にしわが寄る。 「……で、なんで交尾?」 「数日前、シンジが現れた。お前を連れてな。嫁かと思った。美代ばあちゃんに会わせるためにきたと思った」  当然のように話すたぬきに、慎二を昔から知るたぬき視点では、そういう発想になるのかもしれない、と思いなおす。 「ごめん。慎二は友人なんだ。僕がちょっと弱ってしまったから、療養にって連れてきてくれたんだ」 「そうか?」  たぬきの返事は語尾が上がっていた。納得ではなく疑問形だ。 「そうかって?」  たぬきは前足で腹をポリポリ掻きながら言った。 「シンジが美代ばあちゃんに言っとった。俺の大事な人だからって」 「……え」 「だから、てっきりな」  ぶっきらぼうに話すたぬきに、愁は妙な緊張を覚えた。気持ちはソワソワとし始め、息が詰まるような感覚。鼓動はトクトクと音を立てる。 「まぁ、シュウを置いてさっさと出ていったし、俺の聞き間違いかもしれんな」 「…………」  慎二は起業してから、ずっと多忙だと言っていた。取引先の開拓にがむしゃらに取り組んでいると。もちろん従業員すらいない。全部自分でやらなければいけない。そんな慎二がわざわざ九州まで付き添ってくれたのだ。とんぼ返りしたのもスケジュールが詰まっているから。  さっさと出て行ったなんてとんでもない。
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