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 本当はずっと心配してくれてたんだね。  慎二の背に軽く当てていた手に少しだけ力を込める。 「そうだな。とりあえず着替えるよ」  慎二は肩に顔を埋めたまま、明るい声で言い顔を上げた。その目が少し潤んでいて、ドキッとする。また内側からジュワーッと熱が顔に上がるのを感じた。慎二に至近距離で顔をじっくり眺められているのだ。愁の緊張に気づかず、慎二は「うん、よかった」と小さな声で呟きグイッと上体を起こした。慎二の背中に日が照り眩しい。愁の目が泳ぎ、少しだけ俯いた。 「うん、ありがとう」 「んーっ。体バキバキ。風呂も入ろうかな」 「ゆっくり入って来なよ」 「おう。あ、昼飯まだだよな?」 「うん」 「じゃ、風呂のあと食いに行こう。待ってて?」  慎二は勝手知ったるなんとやらで縁側から家へ上がると真っ直ぐ風呂場へ消えた。  慎二の背中が見えなくなり、愁は胸の辺りを落ち着かせるように撫でた。目まぐるしいサプライズの連続にてんやわんやだったが、愁にとって嬉しいサプライズだった。  会えて嬉しい。話ができて楽しい。顔を見ると安心できる。だけど、それだけではない妙な焦りや緊張のこのドキドキはなんなんだろう。きっとたーさんが変なこと言ったせいだ。  そう思った瞬間、足元から声がした。 「お熱いの」  さっき逃げたはずのたぬきが足の間で座っている。 「たーさんっ!」 「これから交尾じゃろ? シュウも入らなくていいのか?」 「ちょ! だから、なんでだよ」 「違うのか? 今、熱い抱擁を交わしておったじゃろ」 「違う、違うってばっ! あ! そんなことより。慎二にたーさんを紹介しなくっちゃね」  愁は真っ赤になって否定したが、図星と思われるのが嫌で慌てて話を逸らした。すると、たぬきは無言でトコトコ歩き庭木に隠れてしまった。
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