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エー先輩は匂いを嗅いだ。それから耳を近づけた。そして箱を軽く叩いてみた。
捜査二課の人々は戦々恐々としている。
「どうやらこれは爆弾ではありませんね」
エー先輩はさらにクンクンとしつこく嗅いで、「おそらく食べ物でしょう」と笑顔で言った。
二課に安堵な空気が広がった。
エー先輩は特別班のシマにもどると、ドアに鍵をかけた。
「我々は、こちらの仕事をしましょうかね」
「エー先輩、あれは?」
「あー、もうすぐ部長が来れば、みんなもわかりますよ。決してドアは開けてはいけませんよ」
エー先輩はニヤッと笑った。
「はあ、何でですか」
「こっちに空気が入ってきますからね」
「はあ」
僕には全くなんのことかわからない。
「で、なんでラブレターなんですか」
しびれを切らしたビー先輩が聞く。
「あー、これなんですよ」
エー先輩は手袋をして、ビニル袋から真っ黒な便箋を取り出した。
真っ黒な便箋は異様な空気をまとっていた。
「 読んでみてくださいね」
ぼくは慌てて手袋をして、エー先輩から真っ黒な便せんを受け取る 。
「最大級の愛をこめて」
わざわざ新聞や雑誌から切り抜いた文字が並んでいた。
「またけったいなものを……」
ビー先輩は軽蔑の眼差しだ。
「君たち、ラブレターをもらったことがあるなら、この心理がわかるかと思って……修行だと思って推理してみて」
エー先輩はくすりと笑った。
「こんな手紙だけじゃ、詳しくわかるはずねーだろ。まあ、わかるのは好きだったけど、恨んでますってことか」
ビー先輩は頭をかく。
「いったい、宛先の主は何をやったんだ……」
ビー先輩はつづけた。
「この手紙、愛を込めてって書いてるし。でも黒封筒、黒便せんなんて不気味です。嫌な感じがします。切り抜き文字も同様です。でも愛なんですよね」
僕は正直に意見を述べた。
「では、あれとこれ、セットだったら……?」
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