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ウーゴ砦鉄甲騎格納庫――
技師や機関士、そして先輩操縦士達が見守る仲、駐機していた[機械の巨人]は唸りとともに[ぎこちなく]立ち上がる。
身の丈は九メートル程度――
一見頭部を持たない、飾り気のない箱形の胴体――
長い腕に短めの二脚――
お世辞にも見た目が良いとは云えない。
背嚢のように突き出した機関部と巨大な水容器が、その武骨さを寄り際立たせている。
「まぁ、無事に起動したようだ……」
「本軍で[部品取り]に使っていた機体のお下がりだった奴だからなぁ」
不安の声を余所に、砦に於ける鉄甲騎整備の長であるドルージ機関士長は、傍らにいる唯一の[弟子]である少年に問いかける。
「どうだ、ナラン。あの機体をどう感じる?」
「機関士長じゃないから、はっきりはわかりませんが……目立った異音は聞こえないけど、立ち上がったときの動きを見ると……」
口籠もるナランを見たドルージは言葉の続きを促す。
「お前も気付いたか……」
「はい、腰の駆動部と足回りのバランスにもう少し調整の余地があるような気がします」
「半分は合格だ。確かに、リストール[新]四号機は予備機を修復したものだから、各部の[歪み]が僅かに残る部分もある。
しかし、このくらいならば、まだ操縦士と機関士の技量でどうとでもなる程度だ」
「じゃあ、何が問題なんですか?」
自身の答えを半分失格扱いされたことに不満なナランであったが、続く師匠の言葉に納得する。
「あの[新入り]、緊張して[力んで]やがる……」
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