二人の新人

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〈ゴンドア〉と呼ばれる大陸があった。    魔物、侵略、災害、兇賊……この大陸に於いて命を脅かすものは、様々な形で襲い来る。    跳梁跋扈する恐怖を克服すべく、かつて繁栄を極め、そして滅んだ、現在は〈前文明〉と呼ばれる往事渺茫の彼方に消えた超科学文明の遺産を頼り、掘り返し、または[魔術]や〈火薬〉と云った代価品を作り上げ、生き延びる人々……    彼等人間達は再びこの世の主役に返り咲き、やがて〈飛龍〉と呼ばれる幻獣を駆使し、それらが失われると、今度は〈鉄甲騎〉と称する巨大な機械の騎士を繰り出し、それらをこれまた巨大な飛空船に載せ、大なり小なり戦いに明け暮れる……  たった今起動した〈リストール〉もまた、その鉄甲騎の一種である。  正確には〈脚甲騎〉と称する下位の機種なのではあるが、それでもこの鋼鉄巨人を武具として操る戦士は騎馬を駆る〈騎士〉と並び、或いはそれ以上の地位を授かる存在であった。  その戦士を、人々は〈操縦士〉と呼んだ―― 「……前席、槓桿を握る手に力が入りすぎていますよ?」  後席――機関室から機関士ダジーが前席で操縦桿と[格闘して]いるナムゲルに声を掛ける。 「今、集中している……声を掛けるな」  素っ気ない言葉に、苦笑いで機関の操作に戻るダジー。    操縦士に対し、後席の乗組員は〈機関士〉と呼ばれる――  全ての鉄甲騎は例外なく二人乗りである。  〈魂魄回路〉と呼ばれる演算制御装置が付いているものの、全てがまかなえるわけではない。  機関の制御やダメージコントロール、そして操縦士の精神面を含めたあらゆる補佐を行なう――  それが機関士に与えられた役割である。
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