二人の新人

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「接続槓桿を[停止]から[巡行]、[歩行]に切り替え……  これより、練兵場に向かう……前進!」  一つ一つの手順を口に出して確認するのは不安の表われだろうか。  ――大丈夫、俺は出来る!  心でそう言い聞かせ、前進のために機体の脚を駆動させる踏板に自らの足を乗せたその時…… 「うわっ!?」 「ちょ、前席!?」  ナムゲルの操作で歩き出す筈のリストールは意図と反し、早足で歩き出したのだ。  箱形鉄巨人の暴走に格納庫から一斉に逃げ出す機関士達。  それを追うようにリストールもまた、青空の下に姿を現わした。  そんな中、他のもの達同様に外へと出たドルージは、共に掛け出した少年を呼び止める。 「ナラン、モミジを呼んできてくれ……」 「前席落ち着いて!?……踏板に力かけ過ぎ!!」 「わ、わかっている!」  こういう場面に於ける「わかっている」は、大抵「わかっていない」の代名詞であり、冷静な対処が出来ない状態であることは目に見えていた。  他の機関士や先輩操縦士が右往左往する光景が受像器に映し出され、それが焦りを呼ぶ。 「と、停まれ、リストール!」  慌てて制動を掛けるナムゲルだが、いきなり停止させられたリストールは当然の如く勢いが止まることなく、バランスを崩し…… 「倒れる!?」 「もう駄目だ!」  取り乱したナムゲルとダジーが思わず目を瞑る。
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