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そんな二人の前に湯飲み碗が置かれた。
「あんまり落ち込まないでください。おじいちゃんも、お二人を思ってきつく言ったんですから……」
ドルージの孫娘にして給仕係の少女プロイが薬罐を差し出し、茶を注ぐ。
傍らには、両腕が翼に変じたツバサビトの少女、副隊長シディカ・トノバ付の伝令セレイがニコニコと笑みを見せた。
「アタシだって失敗はあるし、副隊長なんて報告書を書くのをサボってよく怒られているし……」
幼い二人の慰めも、ナムゲルには届かなかった。
訃報が王城に届いたときは兄の仇を討つことを決意したものの、その敵も既に〈鉄甲騎モミジブライ〉によって倒された後だった。
「貴方の兄を討った相手は鉄甲騎の中でも最高位の〈凱甲騎〉です。リストールでは刃が立たないのは当然です」
ダジーだけでなく誰もが、兄が「討たれたことは恥ではない」「相手が悪かった」と言うが、ナムゲルは納得出来なかった。
――せめて俺は、一日も早く一人前の操縦士になるんだ!
その想いだけが、ナムゲルにとって心の支えだった……
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