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先輩と交代で正式なサンタになった。僕用になったデスクの上には、サンタ宛の手紙がうず高く積まれていた。
地上人が書いたサンタ宛の手紙は、全て天界郵便局のサンタクロース課に集配される。三○○人で分担して仕事をするのだが、僕のような新人サンタには、難しい手紙は回ってこない。
手紙を一つ手にした。
「食べ物が欲しい」
気の毒だ。クリスマスを待たずに差し上げることにした。助手のトナカイを手招きして呼ぶ。
天界トナカイは賢いのだが、言葉を話せない。
「天界郵便局近くに“激安”って看板を出している、スーパーさんあるから、そこでお米を買ってきて欲しいんだ」
贈答用の米と一筆、店員さん宛てに手紙を書く。天界トナカイが口に加えて、急いで、空いている窓を探して、明るい空に飛んで行く。
体調を崩していた間のアイデアを、企画書として上に出しておいた。
サンタクロースは、地上人の政治、宗教には一切関与しないのだ。習慣については、多少なら関与できる。
たまに、保護者が選挙に出馬した子どもから、サンタ宛に当選させてください、とか手紙が来るが、ベテランのサンタが担当する。
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