その工場は夢を見る

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 その日の夜、アジロが両親と一緒に夕食を食べていたときだった。  喫茶店を閉店してからの、いつも通りの一家団欒の時間。しかし今日のアジロは、もやもやしたものを抱えていた。昼間にしたニイザとのやり取りが、なんとなく心に残っていた。 「おれの夢って本当に叶うのかな」アジロはひとり言のようにつぶやいた。  それを聞いた両親は顔を見合わせてから、アジロにやさしく話しかけた。 「何を言っているんだい、アジロ。叶うに決まっているじゃないか」 「そうよ。むしろそうやって疑い始めたら、叶うものも叶わなくなてしまうわ」 「母さんの言う通りだ。信じて突き進むからこそ夢は叶う」 「努力は絶対に裏切らない。アジロには才能があるんだから、大丈夫」 「自分を信じて。最初は根拠のない自信でいい」 「できると信じるところから、夢ははじまるのよ」 「実力はあとからついてくる」 「あとはアジロの諦めない気持ちしだいよ」  ふたりから次々と送られる励ましの言葉に、アジロは元気を出して答えた。 「そう、だよな。おれ、少し弱気になってた。夢は必ず叶う。夢が叶うその日まで、おれ、もっともっと頑張るよ!」 「そうそう、その意気だ!」 「さすがはわたしたちの息子ね」  両親が笑顔で言う。 「さあ、まずは焦らずたくさん食べな。夢のためにも大きくならないとだからな」 「でもお肉だけじゃなくて野菜も食べなきゃダメよ? バランスよく食べなくちゃ、丈夫な体にはなれないからね」 「わかってるよ」  ムスッとした表情でアジロが言うと両親は笑い、それを見てアジロも笑った。  食卓に笑顔が戻った。  和気あいあいとした空気の中、アジロは大いに笑い、大いに食べた。  両親だってこんなに応援してくれているんだ、この夢が叶わないはずがない。  アジロはお腹いっぱいになるまで、夕食を食べ続けた。
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