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その工場は夢を見る
湖のほとりにある道を、少年が歩いていた。
年齢は十二歳くらい。体は細かったが、そう簡単には物怖じしない、少し生意気そうな感じの男の子だった。背中にはカバンを背負っている。
少年は学校から帰る途中だった。湖の道は、本当は家に帰るには少し遠回りだが、少年はこの道が好きでよく利用している。
少年の住んでいる国は機械文明が発達しており、ほとんどの場所が人工物で埋まっている。城壁に囲まれていて、人口の割には土地が限られているため、建物はひしめきあっている。そんな中、湖の周囲は多少なりとも自然が残っている数少ない場所だった。公園も多く、人々の憩いの場となっている。
ただ、この湖にもひとつだけ大きな人工物があった。湖の中心に小さな島があり、その上に白くて四角い工場が建っているのだ。関係者以外立ち入り禁止だが橋がかけられていて、島には行き来ができるようになっている。
緑と湖と工場という組み合わせは、どこか幻想的だった。
少年が学校帰りによくこの道を使うのは、この雰囲気がなんとなく好きだからだ。湖の風景を見ながら少年は、自分の家へと歩いていった。
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