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「いいか?別れも出会いも、生きていれば必ず経験する。悲しいことがあれば、そのぶん楽しいことがある。樋渡をがっかりさせないためにも、精一杯生きて、笑っていろ。笑ってれば、とりあえず悲しい気分にはならないはずだ。」
「……はい。」
「でも、どうしてもダメになったら、誰かに言え。聞いてもらうだけでも、スッキリするぞ。分かったな……ローズ。」
「はい、師しょ……えっ!!!?」
私は驚いて飛びのいた。
「師匠、今……。」
「ん?どうした?」
「……いえ、やっぱりなんでもないです!早く帰りますよ!」
ローズ。
何度言っても、私を「さくらこ」と呼んできた、あの師匠が。
私は、師匠がくれたハンカチで、気づかれないように目じりをぬぐった。
「師匠!」
「何だ、さっきから。」
「私は……絶対に花の女神様になりますよ!」
可愛い花や美しい花。
見ている人が、素敵な花だって思わず微笑んでしまえるような、その香りと見た目で、辛い思いをしている人も明るい気持ちになれるような。
そんな花をたくさん咲かせて、世界中を笑顔にしたい。
ピストルの弾も、投げつけられる石も、ぜーんぶ花に変えたい。
私は、世界中を笑顔にできる花の女神さまになるんだ!
初めて別れを経験した、小さなお友達のためにも。
そして、師匠の為にも!
後ろで、師匠が笑ったのが分かった。
「ああ。前から言われてた。よし!帰ったら特訓だ!言ったからには必ず花の女神になれよ、ローズ!」
「はい!」
私の返事が、青い空に吸い込まれた。
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