音色

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そんな中、校内の合唱祭で俺と同じくクラスの伴奏を担当することになった和音(あいつ)と、話す機会ができた。話を聞いてみると、同じピアノ教室に通っていることが分かり、意気投合した。個人レッスンが主体の教室なので、他の生徒のことは殆ど知らなかったし、和音(あいつ)はピアノが好きだから続けていて、コンテストなどには出た事がないと話していた。 「先輩、もうすぐ雨が降ってきますよ」 和音(あいつ)の予言はよく当たった。なぜ分かるのか聞くと「雨の匂いがする」と笑っていた。 花の香りや、天候の変化、人の気持ちさえ一番最初に気がつくのは和音(あいつ)だった。 あの過敏なほどの感受性を、表現する側に生かしたら…… 俺は和音(あいつ)の心からのピアノを聴いてみたい。 だから、あんなもの(パンフレット)を押し付けてきた。
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