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しきりに首をかしげながら歩く杉野さんの
後ろを歩きつつ、俺は何となく後ろを振り
返った。
杉野さんは気づいてないみたいだけど、
この肝試しはほとんど人為的なものだ。
廊下の足音は、黒い服を着た生徒が照明の
弱いところを歩いただけ。
窓に映る人影は、杉野さんが気づきかけた
通り、教室から一瞬顔を出しただけのもの。
だけど鏡だけはどうにもならないから、
キーホルダーのラインナップでどうにかする
というのが実行委員会…もとい友達の案
だった。
賑やかしとして呼ばれたからつまらないと
思っていたが、片思い相手である杉野さんと
組めてラッキー。そう思ってたんだけど…。
「まさか怪談実現するとか…マジか。」
目を塞がなかったら、鏡の中の俺が……
まぁ、やらかすところまで見られるところ
だった。
「松川ー?あんたそういえばキーホルダー
取ってきた?私忘れてたんだけど…。」
「あー大丈夫大丈夫、とってきてるよ。
だからさっさと行こーよ。ね。」
さっさと抜けるべく、杉野さんの細い肩を
ぐいぐいと押す。
その日俺が出会ったのは、あり得ない筈の
旧校舎の怪談と…改めて、杉野さんが大好き
過ぎる俺の姿だった。
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