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「桃也[トウヤ]、起きなさい。朝ご飯出来てるわよー。」
「…はーい…今行くー…」
ゆっくりと身体を起こすとグッと背筋を伸ばし、大きな欠伸をした。
ベッドに腰をかけ、部屋を見回す。
いつもながらに気持ちの悪い部屋だとは思う。
壁に等間隔で貼られたポスター、机上へ丁寧に並べられたフィギュア、 コルクボードに張り巡らされたラバーストラップ…
着せ替え人形用に作られたドレス衣装のミニクローゼット…
今巷で大人気のアイドルグッズである。
まあこういったものを見ると大抵の人が
「こいつはアイドルオタクだ。」
と思うだろう。
それも重度の。
かなりやばめのオタクだ、と思うだろう。
ただ、僕は普通のアイドルオタクとは少し理由が違う。
そう、推しがいないのだ。
つまりどういうことかって?
それはね、実のところアイドル自体には興味ないのだよ。
顔が可愛かろうか不細工だろうがそんなのはどうでもいいんだ。
そんなこと言っちゃあ全国のドルオタから石やら槍やら火車やら家に投げこまれそうだけど。
僕がみんなと違うところ、それはね……
「桃也、早く起きなさい。」
「はい。」
扉を開けて母が顔を覗かせた。
慌てて我に返り身支度を整える。
話の続きはまたあとにでもしようじゃないか。
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