君へ

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コツ、コツと鉛筆の音が規則的に響く。 暗い部屋で1人、椅子に座った少年は何かを書いているようだ。 「あぁ、もう!」 少年は鉛筆を投げ捨てた。 カラン、カランと鉛筆が転がる。 新しい紙を出した。 さっきの紙は、クシャクシャに丸めて放ってある。 先の折れた鉛筆をふたたび手に取って、少年は何かを書き始める。 ただ暗いだけの無機質なこの空間に、コツ、コツと鉛筆の音が響く。 静かに鉛筆が置かれた。 少年は……涙を零していた。 「……これじゃ、届かないんだよぉ」 少年は部屋を去った。 『ありがとう、ごめんね』 少しシワの入った手紙には、確かにそう書いてあった。 暗い、"誰もいない"部屋には、ただ1人、ひたと少年を見ていた者がいた。 「……大丈夫、ちゃんと届いたから」 私は静かに涙を流した。
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