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俺は待つのが下手だ
翌日、盛山が布団から起き上がる頃、まだ細川はベッドの中に潜り込んでいた。
二人は日々交代で布団とベッドを行き来している。細川はベッドで寝るとき、いつも体をくの字に折り畳んでいる。盛山には丁度良い大きさのベッドでも、細川では足が出てしまうからだ。
盛山の家には元々ベッドが一つしかなく、細川と同居するにあたって布団を一組用意した。男二人がシングルベッドを使うということには様々な問題が付きまとう。単純に狭いという以上に、二人が同居を開始したのが六月だったこともあり、暑苦しさが尋常ではなかったのだ。
改めて細川の姿を見ると、盛山は名残惜しくなった。しかし、二日待てばいつものように顔を合わせることになる。
細川にひっそりと朝の挨拶をすると、盛山は気を取り直し、ティーバックの紅茶と総菜パンを朝ご飯にして、早々に支度をする。今日はバイトのシフトが八時間入っていた。盛山は薬局でレジ打ちや品出しのバイトをしているのだ。
「じゃあ、行ってきます」
返事を期待してはいなかったが、盛山はそっと口に出した。ベッドの上の塊がモゴモゴと動き出して、生じた隙間から茶髪が見える。
「……いってらっしゃい」
いつもより数段低い細川の声に、盛山は自然と頬を緩ませていた。
帰宅したら細川のカレーが待っている。
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