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ピンクの手紙
私はかわいいピンクの封筒を持った手で奈々子ちゃんの家のチャイムを鳴らした。
中から「はーい」とおばさんの声が聞こえ、すぐに玄関の扉が開けられる。
「あら、凜ちゃん、いらっしゃい。なっちゃんのために来てくれてありがとうね」
おばさんは笑顔でそう言って私を家の中へ招き入れた。
「お久しぶりです、おばさん。お邪魔します」
私は靴を脱ぎ、奈々子ちゃんの部屋がある二階へと向かう。
奈々子ちゃんの部屋は最後に来た時と何も変わっていなかった。
ピンクのランドセルが置かれた勉強机にきれいに布団の掛けられたベッド、かわいい動物たちの人形の入った籠にいろんな絵本がある小さな本棚。
まるで時間が止まったままのような部屋はとても懐かしくて、心がえぐられるようで痛かった。
奈々子ちゃんはもうこの世にはいない。半年前に車にはねられ、死んでしまったのだ。
——あれは私のせいだった。私が奈々子ちゃんと公園で遊んでいたときに、うっかり外に出てしまったボールを追いかけて奈々子ちゃんは車にはねられてしまった。
奈々子ちゃんの家族は私のせいじゃないって言ってくれたけど、あの時、奈々子ちゃんを止められなかった私が悪くないはずがない。
体が宙に浮き、地面に強く叩きつけられたあの時の姿が昨日のことのように鮮明に覚えている。
もし、あの事故がなければ今頃9歳らしく元気に走り回っていたんだろうな——。
手に持った封筒を開けるとかわいらしい花柄の便せんが出てくる。
便せんには、たどたどしい字でこう書かれていた。
「おねいちゃんへ
わたしのおともだちがおてがみもってかくれんぼしているよ
みつけてね
ひんと ふかふかおやすみ」
今日の朝、ポストの中に入れられていたあの子の手紙。きっとおばさんが入れたのだろう。
なんで奈々子ちゃんの手紙が今になって来たのかは分からない。でも、この手紙に書かれたことをやり終わるまではおばさんに聞いてはいけない気がした。
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