他の借金

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ずっと嫌だったけど、物心付いた頃からずっと嫌だったけど、特に中学の3年間はとにかく家にいるのが嫌だった。 親父の生態がどんなものか、普通のお父さんがどんなものかがよく見えるようになったからだと思う。 家が嫌になると飛び出して街に出るといつも一緒になる奴いた。申し合わせたとか、連絡を取っていたとか、気が合うとかではない。 街をぶらつくといつもその辺にいたのだ。 本当かどうかはわからないけど帰る家は無いと言っていた。 一緒にいてもあんまり喋らないし、特段悪い事したいって訳でもなさそうだから、何となくだが時々合流していただけだ。 真っ白い顔に赤い唇が印象的で、名前に付いた「雪」って文字がピッタリだなって思ったのを覚えている。 そいつと二人で纏めて補導された日、その雪の字が名前に付く奴は静かだった。慌てもせず、争いもせず、文句一つ言わないでトイレに行くと言ったまま消えてしまった。 誰も気付いてなかった。気付いたのはそれとは無しに待っていた俺だけだったと思う。 一人で逃げたんだと思うと自分の無能さに腹が立ち、ヤケになって正面突破を試みた。 それは無駄だったけど、鉄格子の無い窓を見つけたから今度はそこから逃げた。 門を出るまでに捕まったけどね。 「……目立ってるじゃないか」 「署内ではもっと目立つ奴がわんさかといたんです、それに捕まったのは門の辺だから建物の中からは見えないでしょう、外にいたんですか?」 「さあ、それはわからないけどタフだなって感心したらしいよ」 「捕まってるじゃん、一緒に補導された奴は逃げたんですよ?あいつら親父が迎えに来るまで帰せないって言うけど俺の親父が来るわけ無いし、結局次の日の昼に学校の担任が来るまで暗い部屋に閉じ込められていただけです。タフでも何でもない」 「そこが面白いなあって思ったから覚えてたんじゃない?」 「だからって……」 そもそも何故椎名が健二の世話を焼いてんだか、その関係性もわからない。 俺の場合は………… タフな奴の腎臓はタフだって思ったのかな? この腎臓はタフだから高いよ、とか取引の材料になるのかな。 もっと色々健二に聞きたかったけど、「後10分」と店からのコールが来てカラオケ屋を出なければならなくなった。 気になる事が多過ぎて消化不良だけど、残りは10分。何でもいいから知ってる曲を入れまくって、まだ音楽が流れている中カラオケ屋を出て来た。 この後はお楽しみだ、爆音を鳴らしての深夜ドライブ。 楽しいったら無い。 健二も楽しいらしい。 バイクがうるさくて自分にも聞こえないのをいい事に、カラオケ屋で歌ったナンバーを見境なく大声で歌っていると健二も合わせてくれた。 走る〜走る〜オレーターチー♫ 綺麗なお月様が笑いながら付いてくる。 健二の背中に張り付いて、歌って笑って何かハイになっていたのだと思う。 GPSが落ちていた交差点まで来るとエンジンを止めたバイクの横で、どちからともなくギューっと抱き合った。 変なの。
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