神様と目が合いません

タピオカ

何でだ、どうしたんだ、どうなってんだ。

ソファで寝た筈なのに気が付いたらベッドにいた。
それはつまりだ、今の立場を考えず、馬鹿みたいに寝こけている間に椎名とか健二に運ばれたって事だ。
確証は無いけどそうしかない。
見知らぬ第3のヤクザが噛んでいないなら椎名と健二しかいないのだ。

何と言えばいいのか……昨日一日ここにいて感じたが、デカイ2人から見下ろされているような気がする。実際の話、見下ろされてはいるが、椎名と健二の対応が妙に優しい所が不気味としか言えない。

取り扱いの裏に「子供を相手にしているような手加減が見えて嫌なのだ。

でも寝ちゃった。
子供のように。

眠ったまま運ばれている図を考えれば超恥ずかしい。

この際だから、やっぱり腎臓を売ってから逃げた方がいいような気がする。

顔を合わせるのが気まずくて、ドアの隙間から事務所の方を覗いてみた。

「あれ？……」

時計が無いからわからないけどまだ朝は早い筈だ。健二がソファで寝てるんじゃないと思ってたのにいない。

時間は6時過ぎ、事務所のドアにはごく一般的な鍵しかない。

「いけるじゃん」

逃げてもいいよって椎名は言ったがどうやらそれは本当らしい。何せ借金のかたに抵当に入っているのは己の腎臓なのだ。逃げるチャンスがあるなら逃げといた方がいいに決まっている。

もし俺が逃げたら健二の腎臓も貰う？

じゃああげるよ。
昨日会ったばかりの知らない人だし、椎名と健二はとても親しそうだ。本気で言っているとも思えない。
それに、焼肉を食べさせてくれたからって「いい人達だ」……なんて勘違いをする程甘い人生を送って来てない。

焼き肉のメニューを見たらロース一皿で2800円とか書いてあった。

一皿2800円って何だ。
小さい皿には薄切りの肉が5枚くらいしか乗ってなかったよ、グラムで言えば100も無いよ。
食べて、飲んだ量からして、3万円は軽く突破していると思う。そして「奢って貰った」、なんて夢も見ない。
俺が食べた分……もしくは3人分の会計が借金に上乗せされているか、返済に充てられる筈の給料から引かれてる。
絶対。

だってヤクザだもん。