解説5 何度も何度も巧妙な猟師のトラップに引っ掛かり怪我を負い続けたうさぎは、人を信じられなくなっていきました

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解説5 何度も何度も巧妙な猟師のトラップに引っ掛かり怪我を負い続けたうさぎは、人を信じられなくなっていきました

 この病気には未だ有効な薬がありません。副腎皮質ホルモンのように、一時的に綺麗になる薬はあっても、それらを使い続けると次第に効き目がなくなり、副作用で恐ろしい目にあってしまうことがあります。勿論、軽い症状であれば、少量の薬品で効果があって治ってしまう人はいます。けれども、継続してステロイドを外から補うと、本来自分の身体の中で作り続けられなくてはならない副腎皮質ホルモンをストップさせてしまうことになります。私は幼い頃から、ステロイドは怖いものという知識を植え付けられてきたので、なるべく使いたくないという気持ちがずっとありました。そこで病院で処方されるステロイドは最小限に留め、あらゆる民間療法を試してきました。数え切れない程の健康食品、温泉、漢方、副作用の心配がないとされるクリームetc...。ステロイドが入っていないと書かれているにも関わらず、実際強度のステロイドを入れてクリームを販売していた業者に騙されたこともありました。2回ほど腕の一部に使用して、自分には合わないと判断したので事なきを得ましたが信じて使い続けていたらと思うと恐ろしくて堪りません。  また、プロトピックを処方される例も増えてきているようですが、これは免疫抑制剤であり、やはり多用すれば身体を守るための免疫機能を壊してしまうこととなり、感染症から命まで脅かすような重大な病を引き起こす場合もあることが知られています。近年高額なデュピクセントという新薬も登場しましたが結膜炎などの副作用も報告されていますし、顔にはあまり効果が見られないという声もあるようです。様々な情報を比較し、何が自分に合う治療法なのか選択するのは患者さん自身の自由意志なので周りがとやかく言うべきではないとは思います。  「良くなるかもしれない」という淡い期待は何度も何度も打ち砕かれました。ネットの世界には同じ病気に苦しむ人々が受けた数々の暴言が聞こえ、家族にさえ理解されないでいる人もいます。「掻かなければいいだけの話なんじゃないの?」「忍耐力が足らない」「汗をかかないから治らないんだ、じっとしていないで運動すればいい」などなど。健康な肌を持つ人には想像もできないと思いますが、症状が出ている肌は汗をかくと猛烈に痒くなるのです。それは到底我慢できる痒みではないのです。例え、ものすっごく強い精神力をもって覚醒時に掻くのを我慢できたとしても、寝ている間に無意識に掻いてしまい、朝起きるとパジャマやシーツが血だらけになっていることもあります。薄くなった皮膚が冷たい外気に触れれば異常な痛みに襲われます。思わず「痛い!痛い!」と叫んでしまいそうなほどの痛み、それは火傷をして皮が捲れた肌で、海水に浸かったかのような苦痛、と表現したらいいでしょうか。冬の時期だけでなく、夏には店内の利きすぎたクーラーにもたくさん脅かされました。肌に強い炎症が出ているということは、排毒が正常に行われていないということが多いのです。そんな時に無理に身体を動かせば、全身に毒を行きわたらせることになり、余計事態を悪化させてしまいかねないのです。この辺りは信頼できる主治医と相談して指示を仰ぐことが必要かと思います。  家族にも訳の分からない病気に対してどうしたらいいのか分からず悩ませてしまいました。心から治してあげたいと思って商品を薦めてくれる方も確かにいます。けれど本当に自分に合ったものを使わないと逆効果になる場合さえあり、他の人に合ったからと言って自分にも合うとは限らないのが難しいところです。どんなに無添加、自然のものだけを使っていると謳っていても極度に敏感になり、機能が低下した身体には害になってしまうこともあることを、私は身をもって体験させられました。良くなる為と毎日頑張って飲んでいたサプリメントが身体に負担になっていると聞かされた時には、自分のそれまでの努力は何だったのかという強い脱力感に見舞われました。現代人は、身体に良いものをどんどん摂取しさえすれば健康でいられる、というサプリメント依存になる傾向もあるのかもという気がします。アレルギー体質の人は特に、そういった安易な考えを改めるべきなのかもしれません。  ステロイドは危険という意識が広まり、様々な民間療法が世に出回りました。けれどそこにはアトピービジネスという新たな弊害が隠れています。深刻な症状にどうしたらいいかわからず、真剣に悩み藁をも縋る思いでいる患者から、高額な治療費を騙し取る為に虎視眈々と罠を張り続ける狡猾なアトピービジネス。「自分の子供がこの痒みから解放されるなら、何でもしてやりたい」という親の切実な思いを粉々に踏み躙る行為が一体どれほど潜んでいるのだろうと思います。その時売れさえすれば、どんなに人体に害があろうが関係ない、という企業が其処ら中に氾濫している、そういう裏の顔を見る機会がどうしても多くなり、私は何を信じたら良いのか分からなくなりました。騙される方が悪いのでしょうか?否、そうではありません。騙す方が悪いのは分かり切っています。けれど、悪い物が自動的に排除されない現状では仕方ありませんから、自分で見極める目を養うしかないのでしょう。  全てからの解放はなかなか訪れませんでした。この病気が奇妙だと言われる所以を、私は嫌というほど思い知りました。複雑怪奇という言葉が当て嵌るほど沢山の要因が絡まりあっていました。そしてそれは1人1人違うのです。だから、この人にこれが効いたから自分にも、という簡単な図式は当て嵌まらない、そこがこの病気の恐ろしいところだと思います。身体の一部の異常ではなく、皮膚だけの問題だと思っている人も多いかもしれませんが、病歴が長い程副腎を始め、内臓全般、リンパ、血液、神経などあらゆるところに機能障害が出る所謂全身病なのです。大抵の場合、消化吸収能力、排泄機能の低下に問題が生じています。精神的な要因が大きく関係することもあり、部分的にしか病人を見ない現代の西洋医学の問題点がここにあると思います。その為完治できない病が増えているということなのではないでしょうか?身体の内部で問題が起こっているのですから、表面の皮膚にだけ幾らアプローチをしても、根本的な問題が解消していないので何度でも炎症を繰り返し肌が酷くなり続けてしまうのです。
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