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魔物の正体には 時に不思議で奇怪で俄かに信じがたいものもありましたが それを追い払うと格段に身体は楽になりました けれど未だそう簡単に 夜は明けません 信じる心を忘れたうさぎは 小さく震えて周りを窺っているのですから 這い上がっても這い上がっても 頂上に手が届いた次の瞬間落とされる、その繰り返し 苦しみの連鎖は何時断ち切られるのか分からず 異常な日常を 私は数え切れない涙と共に のた打ち回りました 私はこれまで 自分は人とは違うのではないかと思っていました 人と自分の差にばかり 目を奪われていました 自分はまともじゃないと思っていました 周囲は皆とてもきらきら光って見えました そこに居たいと足掻く私を 得体の知れないモノが不気味に笑いながら 瞬く間に引き剥がすのです やがて魔物達は 夢の中にまで触手を伸ばし、追い掛けて来ました 浅い眠りの中見る夢は 何だかずっと居心地が悪くて グラグラと不安定な地面 悪意に満ちた空間 獰猛な獣が体当たりする扉 そこには、嫌いなものばかりが無造作に転がっていました 黒い蜻蛉ばかりを追い掛けて 永遠のような回転木馬は 狂ったように回り続けます そうしてようやく目覚めても 夢に溺れた余韻を何時までも引き摺りました 其処ら中に散らばる色とりどりの毒 齧ればそれらが内部から暴れ出す幻に怯えました
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