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練習
「コンッ」
部屋の窓ガラスに何かが当たる。
俺の部屋は二階の西側にある端の部屋である。
部屋には漫画やオーディオ機器があり、その横にベッドがある。
ベッドがある西側の窓から、その音がした。
「おきてるぅーアカ?」
「なんだクロっ?」
隣の家の窓を挟むと、そこは黒川雪の部屋がある。
「あっあのね今度、学校の体育の授業で創作ダンスの発表会があるじゃん。それ、あたしと組んでやろうよ」
「へぇー黒川雪にはお友達いないのか」
「そっそんな事言ってないでしょ。私が倒れた時の保険よ。ほ、け、ん」
「あぁーそう言う事にしとくよ。それじゃあ明日から練習するか」
「うんっ。へっへへ楽しみだね」
クロは明るくシロと違い元気があり活発的である。今のクロも嫌いではないが俺は雪、本来のシロが好きである。
それでも雪が元気であれば俺は良いと思っている。
クロこと黒川雪とは同じクラスである。青野武志、アオは隣のクラスである。
それでも俺達三人は仲が良い。
中学からの腐れ縁だ。
だがアオはクロの秘密を知らない。
知っているのは俺の家族とクロの家族、そして学校の先生達だけである。
他の生徒には今の黒川雪はクロとして見られている。
本当の雪を知るのは生徒の中では俺だけだ。シロだった時を皆知らない。
クロとシロは同一人物というのもあるのか皆、雪の変化には気づいていないようだ。
俺はクロと二人で少し窓際で話をした後、おやすみと言って朝を迎えるのであった。
次の日から俺とクロは創作ダンスの練習をする。発表会まで一週間。それが終われば、いよいよ夏休みである。
その前にテストもあるのだが俺は勉強はできる方なので問題ない。
ただクロの場合、いつも赤点ギリギリなので危なかっしい。
創作ダンスのテーマは自由だ。
俺とクロは友情をテーマに大好きなアーティストの曲を流し近くの公園や学校の裏庭で練習する。
学校の裏庭は昼休みを利用して練習している。皆考えている事が多いのか沢山の人がいた。
そこで動きのチェックを繰り返す。
「はいっ、クロ、ストップ!」
「えぇー、またぁー?」
「動きがぎこちない。俺に合わせるように」
「いやいやアカが合わせてよ」
「それでも良いが皆の前で恥じかくだけだぞっ」
「うっそれは嫌かも」
「じゃあ、もう一回!」
「はぁーい」
こうして俺とクロは昼休みは学校の裏庭で練習し学校が終わった後は公園で練習するのだった。
「なぁ、なぁーアカ。最近付き合い悪くないか?」
「そうか?」
親友の青野武志、アオが俺に言う。今は部活中であり俺はバスケットボールを転がし遊んでいた。その横には俺と同様バスケットボールを人差し指でクルクル回しているアオがいる。
「いや、だってお前ら二人でそそくさ帰るじゃねぇーか。俺に内緒で何してるんだよ」
「いや、何もしてねぇーよ。ただ創作ダンスの練習してるだけだぞ」
「二人でか?俺も交ぜろよ」
「いいけどクロに許可とってくれよ。後でクロにガミガミ言われるのは嫌だからな」
「分かった。聞いてみる」
アオは、そう言うや部活を見学している少女の所へと走って言った。
体育館の入り口ではアオとクロが話している。アオの表情を見る限りでは許可を許してもらっていないようだ。
アオは諦めた様子で戻ってくる。
「どうだった?」
「いやダメだった。お前と二人じゃなければ意味がないんだとよ」
「まぁー気を落とすなよ」
「いや俺はダメだ。いつも三人一緒だったのに置いてけぼりを食らったよ」
俺はアオの背中を手で叩き励ます。
「まぁー今回は二人の創作ダンスだからな」
「あぁー。その代わりテスト勉強は一緒にやると許可をとったぞ」
「げっ、あいつに教えるの嫌なんだよな。途中でゲームとかするし」
「はっは俺は良いけどな」
「流石アオだな」
もうすぐ部活の終わりの時間である。
俺とアオはボールを片付け俺はクロを呼んだ。
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