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ゲーセン
次の日、部活の最中にアオが俺に言ってきた。
「昨日クロ、大丈夫だったか?俺、実は…あいつの事が好きかも…!?帰ったあと心配で胸が熱くなったんだよ。今度クロに何かあったら俺も病院行くよ」
その言葉に俺は動揺した。
アオが言う好きという彼女はクロでありシロではない。そんな彼を応援できるかわからない。それにもし、また発作がでたらどうすればいいのか俺は迷った。
「あぁー頼むよ」
アオに素っ気ない態度で答える。
「じゃあ、また後でな」
アオは、そういうといつものボール遊びをしていた。
そんな俺達を体育館のドアの所でクロが見ていた。
「ふぅー終わった終わった」
いつものように三人で帰る。
「ほとんどサボってたくせに」
「はっはは」
アオとクロは仲良く喋っている。そんな中、俺は少し落ち着かない様子でそんなクロを見ていた。
「ねっアカ、聞いてる?今日は三人でゲーセン行こう?」
「そうだな」
気を取り直し俺は三人でゲーセンへと向かった。
今日のクロは元気がよさそうだ。
ゲーセンに着くなり、はしゃいでいた。
「ねぇーあのリズムゲームやらない」
「あぁーやろうぜ」
二人はやる気満々であるが、俺はその二人を眺めているだけであった。
以前シロと一緒にゲームをした楽しい時間が忘れられないからだ。
リズムゲームはシロとやったものであった。
しばらくするとクロが満面の笑みを見せる。
どうやらクロがアオに勝ったようだ。
クロはゲーム得意だ。
そんな様子を眺めているとクロが俺の手を掴んだ。
「ほらっ今度は、あたしとアカの対戦だよ」
クロは明るい。
そんな明るさに負けて俺はクロと対戦する。
結果は俺の圧勝であった。
「えぇーなんで、そんな強いの?あたしとやるの初めてだよね!?」
その言葉に俺は頷いた。
クロとこのゲームをやるのは初めてであり嘘ではない。リズムゲームを遊び終えると次はシロとやったレースゲームだ。俺は、この手のゲームが得意で負けたことがあまりない。
アオとクロが座席に座りスタートだ。
「さぁーやるよ」
アクセルを踏みブンブンとハンドルをきるクロ。
その姿にシロの顔が浮かんだ。
同じ顔でも、こうも違うのかと思う。
カーブでクロが俺の後ろからアウトからインへとカットする。
その鋭い割り込みにより俺はクロに負けた。
結果はクロが一位、二位が俺、ビリがアオであった。
「へっへへ勝っちゃった!」
笑顔でいうクロの顔にアオが横目で視線を向けているのがわかる。
アオはクロを真っ直ぐ見つめていた。
「なぁー俺、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「じゃあ俺も…」
「いってらっしゃい」
俺がいうとアオもついてくる。
その背に向けクロが両手をあげ手をブンブンさせていた。
別にどこか遠くに行くわけではない。ただのトイレだ。だが彼女は大きく手を振っていた。
トイレの中。俺はアオとさりげなく話をする。
「なぁーお前、クロの事本当に好きなのか?」
「そういうお前こそ、どうなんだ?」
どうやら俺がクロを好きだと思っているらしい。
実際クロは明るく元気で可愛い。
だが俺が好きなのはクロではなくシロである。
彼女の二つの人格は真逆だが似ている所もある。
同一人物なのであたりまえなのだが。
「俺は…好きだよ」
嘘ではない。俺は黒川雪(シロ)が好きである。
「そうか…なら俺達はライバルだな。遠慮は無用だぜ」
「分かった」
「どちらが彼女の心を射止めるか勝負だ」
「のぞむところだ」
俺達は、トイレの中で互いにに握手する。
そしてすぐに手を洗った。
トイレからでるとクロは缶ジュースを飲んでいた。
クロの好きなミルクティーである。
ちなみにシロはストレートティーが好きだ。
それは俺と彼女の両親だけが知っている事である。
「もう遅いよアカとアオは!トイレで何してたの?」
クロは頬を膨らませている。その問いに俺達は
「お前の事だよ」
そう言った。
「何よぉーあたしに何かあるの?」
そんな会話をしつつ俺達はしばらく遊んだ後ゲーセンを出る。
「あぁー面白かった。また行こうね」
すでに日が暮れていた。
アオと、その場で別れ俺とクロは家路へと向かう。
ゲーセンの帰りは車の通りが激しく、車のライトの光が俺達を照らしていた。
「なぁー俺達どうなるのかな?」
「うーん、変わらないと思うよ。アカはアカだしアオはアオ。それにあたしは…あぁーー」
「どうした?」
「アカリちゃんに電話するの忘れた」
「そんな重要な電話なのか?」
「当たり前だよ。一緒に明日買い物行くんだった!」
明日は土曜日である。
クロは明日、アカリと買い物にいくようだ。
「何買うんだ?」
「それはね…ひ、み、つ」
「なんだそれっ!」
「あぁーアカ、夏休み初日空けといてよね。アオにも言っといて!!」
「いいけど何かあるのか?」
「それも、ひ、み、つ」
どうやらクロは何か企んでいるようだ。
(まぁーしょうもない事だと思うが…)
家の近くまで二人で話しをし、クロが家に上がるのを見届け俺も自分の家へと入るのだった。
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