12人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
翌朝目覚めると、カエルの鳴き声が聞こえることに気づいた。
なんて嫌な朝なんだろう。
母は朝早くから警察署へ行っていた。
テーブルの上には、新聞といくつかの郵便物が置いてあった。
彼の事件は新聞の小さな見出しになっていた。
それがどうしたという訳ではないけど、ただただ不快だった。
何気に郵便物に目を落とすと、私はその光景を疑った。
ある一枚の手紙にはこう書かれていた。
「過去の私へ」
こんな物誰が?
今の私には、こんなイタズラに付き合う余裕はないはずなのに、この手紙をさも、当たり前のような手つきで開いてしまった。
手紙の内容はこうだった。
「強い悲しみに苛まれている私へ、私は彼に伝えたいことを伝えきれなかったけど、彼はきちんと伝えてくれていたわ。家のポストよ。あなたが昨日の朝、取り損ねた手紙。あなたは読まないといけない。彼は勇気を出したんだから」
その数時間後、私はポストの前に立っていた。
土砂降りの中、傘もささず。
警戒線が張られているにもかかわらず、それを無視して中に入った。
恐る恐る手紙を取り出す。
ゲコ、ゲコ、ゲコゲコ、ゲッ
もう鳴き声は私の心に響かなくなっていた。
その手紙を見た瞬間、私は何かが切れたようにその場に座り込み、号泣した。
土砂降りのおかげで叫び声は掻き消され、まるで自分だけ違う時空にいるんじゃないかと錯覚した。
その手紙の最初に書かれていたのは
「過去の歩美へ、拓也より」
内容はこうだった。
最初のコメントを投稿しよう!