最後の手紙。

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翌朝目覚めると、カエルの鳴き声が聞こえることに気づいた。 なんて嫌な朝なんだろう。 母は朝早くから警察署へ行っていた。 テーブルの上には、新聞といくつかの郵便物が置いてあった。 彼の事件は新聞の小さな見出しになっていた。 それがどうしたという訳ではないけど、ただただ不快だった。 何気に郵便物に目を落とすと、私はその光景を疑った。 ある一枚の手紙にはこう書かれていた。 「過去の私へ」 こんな物誰が? 今の私には、こんなイタズラに付き合う余裕はないはずなのに、この手紙をさも、当たり前のような手つきで開いてしまった。 手紙の内容はこうだった。 「強い悲しみに苛まれている私へ、私は彼に伝えたいことを伝えきれなかったけど、彼はきちんと伝えてくれていたわ。家のポストよ。あなたが昨日の朝、取り損ねた手紙。あなたは読まないといけない。彼は勇気を出したんだから」 その数時間後、私はポストの前に立っていた。 土砂降りの中、傘もささず。 警戒線が張られているにもかかわらず、それを無視して中に入った。 恐る恐る手紙を取り出す。 ゲコ、ゲコ、ゲコゲコ、ゲッ もう鳴き声は私の心に響かなくなっていた。 その手紙を見た瞬間、私は何かが切れたようにその場に座り込み、号泣した。 土砂降りのおかげで叫び声は掻き消され、まるで自分だけ違う時空にいるんじゃないかと錯覚した。 その手紙の最初に書かれていたのは 「過去の歩美へ、拓也より」 内容はこうだった。
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