建てかけの館、金沢直順という少年

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二人は食事をする事に成った。その席で月船は 「俺の奢りだ」 と酒もどんどん頼んだ。 藤堂は付き合う程度に呑んだ。 話を聞く程に月船は (こやつは何と良い人間か。俺が同じ境遇なら、同じ様に出来るだろうか…) と藤堂を尊敬した。 藤堂は幼い頃から働き、今も給金の殆どを実家に仕送りしているという。 (ずっと気になる存在ではあったし…存在感があった。何より実秋様が見て、大事にされているのが良いという証だ) 話を聞く程に藤堂も (この御仁は何と良い方か。この様に素直で強く、私は成れるだろうか?) 悪を嫌い人に媚びない姿勢に、月船の魅力を感じた。 (平素から皆に慕われているのは伊達じゃないな。何より実秋様が重宝しているんだ) 藤堂は支払い時までは黙っていたが、借りを作るのを嫌い、自分の分は支払った。 それから二人は何時も一緒に居る様に成った。 仕事でもプライベートでも、どちらかが悩めばどちらかが励まし、どちらかが喜べばもう片方も喜んだ。 《過去》と言ってしまえば、確かにそうだ。 しかし未だに二人は、互いを尊敬している。
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