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建てかけの館、炎上
三月三日、夜も更け…深く静かな闇に浮かぶ月の下、館の西側の崖下に複数の人影があった。
コウノトリは言う。
「段取りは何時もの様手紙通りにして頂きますが、人数も多いので調整も入ります。その際私の後ろに居ります、皆様から向かって右からシロ・クロ・ムラサキ・ミドリが伝達に走ります。ではお願いします」
人影は一斉に持ち場へ散った。
コウノトリの手駒達がそれぞれ放射器を構え、それを合図に梯子で、ウズシオの四人が塀の四隅にそれぞれ登った。
北東と北西のウズシオの横には、盾を持った雁部隊の内の二人が、槍も持ち控えている。
門の内鍵は事前に全て壊してあり、他の人員も持ち場についた。
放射器から油が撒かれ、程なくウズシオらは火矢を放った。
火は瞬く間に広がるだろう。
乾燥した空気が、火を浮かび上がらせた。
館内に居た武士達は声を掛け合い、武器を片手に退避しようとしたが、火の手は早かった。
片足の不自由な武士が、月船の元に来て言った。
「実秋様より、何とか南門より退避し街へ出よ…との伝言です」
月船は落ち着いた様子で
「そうか。して実秋様の退路は確りしておろうな?」
と聞き、大丈夫だと返事を聞いてから刀を取り、南門へ向かった。
他の侍は北門へ向かっていた。
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