建てかけの館、炎上

1/2
前へ
/146ページ
次へ

建てかけの館、炎上

三月三日、夜も更け…深く静かな闇に浮かぶ月の下、館の西側の崖下に複数の人影があった。 コウノトリは言う。 「段取りは何時もの様手紙通りにして頂きますが、人数も多いので調整も入ります。その際私の後ろに居ります、皆様から向かって右からシロ・クロ・ムラサキ・ミドリが伝達に走ります。ではお願いします」 人影は一斉に持ち場へ散った。 コウノトリの手駒達がそれぞれ放射器を構え、それを合図に梯子で、ウズシオの四人が塀の四隅にそれぞれ登った。 北東と北西のウズシオの横には、盾を持った雁部隊の内の二人が、槍も持ち控えている。 門の内鍵は事前に全て壊してあり、他の人員も持ち場についた。 放射器から油が撒かれ、程なくウズシオらは火矢を放った。 火は瞬く間に広がるだろう。 乾燥した空気が、火を浮かび上がらせた。 館内に居た武士達は声を掛け合い、武器を片手に退避しようとしたが、火の手は早かった。 片足の不自由な武士が、月船の元に来て言った。 「実秋様より、何とか南門より退避し街へ出よ…との伝言です」 月船は落ち着いた様子で 「そうか。して実秋様の退路は確りしておろうな?」 と聞き、大丈夫だと返事を聞いてから刀を取り、南門へ向かった。 他の侍は北門へ向かっていた。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加