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コウノトリの思惑通りの動きが、館内で起こっていた。
武士の習性で、いざという時の体制は必ず決めてある。
東の馬小屋は囮、南の街へ出て万民に逃げる姿は、実秋程の武士にも成れば見せられはしないだろうと踏み、西の崖手前の杭も囮であった。
北門の先には小川があり、橋まで逃げて吊り橋を切り落とせば、少々の時間は稼げるし、先の森まで逃げてしまえば見付かりにくかった。
コウノトリは東門に四人、南門には三人、西門にも三人、北門には十人の配置をしてあった。
橋は切ってあり、手前にはトビウオとコバンザメ、塀の隅の北面のウズシオには槍と盾を持った兵を付け、北門からの退避を完全に読み取った布陣であった。
館は炎に包まれ、火は高く踊る様に舞った。
街から火が確認出来ない距離では無かった。
眩しい程の明るさが、館周辺を照らしながら揺れうごめいた。
(ここからは時間の勝負です)
コウノトリは実秋の姿を待ち望んだ。
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