建てかけの館、馬上の実秋

1/1
前へ
/146ページ
次へ

建てかけの館、馬上の実秋

三月三日 コウノトリは北側の最も見晴らしの良い木の上から、遠眼鏡で時計の逆回りに戦況を見ていた。 火に包まれた館から最初の小隊が出て来た。 それを先ず襲ったのは、弓矢だった。 小隊も見越していたらしく盾を持ってはいたが、続いて剣の連中が襲った。 次いで出てきた小隊は盾を持ってはおらず、左右に分かれて決死の戦いをした。 (遅いですね) コウノトリは実秋の登場を待ちながら、一人マイペースな動きをしているフクロウに目を移した。 (あの強靭な侍とかち合いましたか…。あの侍は予想外でしたが、城付きが居るだろうという計算の範疇ではあります。しかし…例えフクロウさんが勝ったにしろ、この単独行動の極端さでは、扱いづらい存在なのは明らかですね) フクロウは月船と相対していた。 最後に小隊を二つ合わせた十三人程の隊が館から出て、左右に分かれた。 (真ん中に道が…) コウノトリがそう思ったその時だった。 一頭の馬が館から飛び出し、盾を片手に出来た道を駆けた。 最初と二番手の小隊は、この頃ほぼ全滅だった。 コウノトリは時の流れに急かされる様に、馬上を確認した。 後ろに実秋、前には少年が見える。 (門外の人間が鍵を握る) 確認すると、三羽ガラスと雁部隊の一人が門外におり、後はトビウオとコバンザメが小川の手前に待機している。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加