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建てかけの館、馬上の実秋
三月三日
コウノトリは北側の最も見晴らしの良い木の上から、遠眼鏡で時計の逆回りに戦況を見ていた。
火に包まれた館から最初の小隊が出て来た。
それを先ず襲ったのは、弓矢だった。
小隊も見越していたらしく盾を持ってはいたが、続いて剣の連中が襲った。
次いで出てきた小隊は盾を持ってはおらず、左右に分かれて決死の戦いをした。
(遅いですね)
コウノトリは実秋の登場を待ちながら、一人マイペースな動きをしているフクロウに目を移した。
(あの強靭な侍とかち合いましたか…。あの侍は予想外でしたが、城付きが居るだろうという計算の範疇ではあります。しかし…例えフクロウさんが勝ったにしろ、この単独行動の極端さでは、扱いづらい存在なのは明らかですね)
フクロウは月船と相対していた。
最後に小隊を二つ合わせた十三人程の隊が館から出て、左右に分かれた。
(真ん中に道が…)
コウノトリがそう思ったその時だった。
一頭の馬が館から飛び出し、盾を片手に出来た道を駆けた。
最初と二番手の小隊は、この頃ほぼ全滅だった。
コウノトリは時の流れに急かされる様に、馬上を確認した。
後ろに実秋、前には少年が見える。
(門外の人間が鍵を握る)
確認すると、三羽ガラスと雁部隊の一人が門外におり、後はトビウオとコバンザメが小川の手前に待機している。
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