引き抜きの厳命

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引き抜きの厳命

三月十九日 今回建てかけの館の被害者は八人の死傷者だった。 この中には軽い火傷や傷の者は含まれておらず、正真正銘の戦力を削りながらの仕事だった。 闇の仕事とはいえ、彼等にとっては殉職。 その者達の家族にコウノトリは、影から日向から金を送った。 殉職者の中にはコウノトリの手駒が居たが、その者には家族が無かったので、代わりに墓を建てた。 重傷者の中にウズシオの一人がおり、彼は左腕を無くした。 もう剣もまともに扱えないし、ましてや弓など全く無理だった。 (月船が居たとは意外でしたが、城付きが居る可能性としては範疇ではありました。しかし…痛い) 元は名将と唱われた実秋であるし、今でも城への影響力は大きかったから、この位の犠牲はコウノトリの中では計算内とも言えた。 アフターフォローに駆け回るコウノトリの元に、頭から御呼びが掛かった。 年に一度有るか無いかの頻度で来る、引き抜きの話だった。 始めに話題として名が上がったのは、月船を仕留めたフクロウだった。 しかし頭は強くは欲しがらなかった。 (当然でしょう。フクロウさんは諸刃の剣ですから) コウノトリもやんわりとした姿勢で、話題を流した。 (暴れ馬…馴らしてみせましょう)
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