引き抜きの厳命

2/3
前へ
/146ページ
次へ
アカメやアオメの部署から名が上がって、その次にコウノトリの部署から名が上がったのは、三羽ガラスと二羽のカモメであった。 コウノトリは胸の内を揺らした。 引き抜きは頭の人員候補と成り、この世界ではエリートとして扱われる。 先々月と先月に大きな仕事をしていたエリート達も、やはり犠牲者が多発して…の引き抜きの話だった。 引き抜きの名として上がるのは、当然その部署のトップスリーからと決まっている。 頭は各部署から二組或いは三組の名を上げ、何れかを差し出す様厳命する。 引き抜かれた者は他の仕事を一切許さず、鍛練と裏稼業のみの生活と成り、代わりに富とブランドを得る。 コウノトリの部署から名が上がった二組は、何れも切札の様な強者だった。 三羽ガラス…コウノトリ配下随一の機動力と身軽さに加え、それぞれの剣にはそれぞれの力がみなぎり、判断力に長けた長兄を始めに、何をも恐れぬ精神力を持った三人の名は、上がって当然だろう。引き抜きの話で三羽ガラスの名が上がったのは、これで三度目でもあった。 二羽のカモメ…シロはよく《二人は心が通い合っている。》と感嘆する、対極な動きもフォローも、対を成せばどんな動きでも出来る二人。剣は勿論、槍・弓を高みに操れる、万能型の二人だった。因みにアカメの部署から名が上がったのは、単独の人間のみだった。 《アカウオかコバンザメかトビウオ》 アカメは静かに目を閉じた。 アカメは単独で動く人間を重んじ、個性を大切に育てるが故に、結果単独の人間が抜きん出やすい。 引き抜き候補で三度名が出、三度残れば、それ以降引き抜きで名は上がらない。 三度自分の所に残った人間は、その時こそ本当の意味での、アカメの手足と成る。 今回名の上がった三名は三名共二度残した人物で、アカメとしてはギリギリの気持ちに成ったろう。 しかし三名を上げた頭としては、一名を差し出す代わりに他の二名共をアカメの元に定着させる、冷ややかな中にも温情ある選択権を与えていた。 アカメもそれを感じ、即決して目を開けた。 コウノトリにしても厳しい選択だった。 普通は同等な力なら、三度目の話が来た三羽ガラスを残すべきだろう。 しかしコウノトリには、コウノトリのやり方があった。 コウノトリは事務所に戻ると、三羽ガラスと二羽のカモメに五通の長い同文の手紙を書き、印を押した。 それをシロに言付け、それぞれの元へ行かせた。 コウノトリはこの任に就いてから、ずっとこうしている。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加