コウノトリの名

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ぼんやりして行く意識を引き戻しながら、コウノトリは這った。 前へ前へ。 這ってまで進む事に、意味など無いだろう。 それでもコウノトリは手を前に出し、何処かへ進もうとした。 それを見ていた中年の男が、傍に来てしゃがんだ。 何人かが直ぐに寄って来た。 その中年男性は 「この坊主は根性がある。連れて帰るぞ」 とコウノトリを抱き上げた。 他の者が 「頭、俺が持ちますから。御召し物が汚れます」 と言ったが 「いやもう汚れてるさ。坊主、安心しろよ。元気に成るまで、飯位は食わせてやるから」 とコウノトリを抱き締めた。 コウノトリは腕の中で、ゆっくり意識を失った。 コウノトリは頭の家で三食を得、医者にも診て貰った。 三日後頭がコウノトリの居る部屋に来て訊ねた。 「坊主は元気に成ったら、行きたい所はあるのか?」 コウノトリは首を横に振った。 頭は大福餅をコウノトリに与えたが、今まで食べた事の無い味に驚き、コウノトリは慌てて食べてむせた。 頭はお茶を渡し笑って 「急がずゆっくり食べなさい。大福は逃げやせんし、また買って来てやるから」 と頭を撫でた。 「行く所が無いなら、此処に居るか?」 と問われコウノトリは 「お…お…俺居てい…良いなら…」 と一瞬頭を見たが、直ぐに目を伏せた。
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