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建てかけの館、三羽ガラス請負編
二月二十七日
三羽ガラスの元にシロが来た。
三兄弟はそれぞれ手紙を熟読している。
三男は読み終わると、溜め息を吐いて言った。
「二十八人の大仕事かあ…。《建てかけの館》の老将望月実秋は引退したけど、長男は既にこの世の者でなく、次男は愚鈍らしい。けど配下は優秀だったろ?海原、月船、間嶋なんかの優秀な武士は城付きだけど、館に居るのも武士が多いだろうから、二十八人でも多くは無いよな」
次男はやる気を出している様で
「昔は名将でも、今は隠居の八十越えた爺さんだ。配下にゃそこそこの武士が居ようが、所詮城付きじゃないんだから、軽く伸せるさ」
と拳を作った。長男は黙っている。
シロは返事を促した。
長い沈黙の後、長男が引き受けたと返事をした。
「おしっ!やってやるぜ!」
次男は立ち上がり言った。
シロは似顔絵と作戦案の三枚の手紙と、館の見取図と近隣の地図を長男に渡して、会釈をして出ていった。
三人は見取図と地図に目をやりやり、手紙を読んだ。
三男は声を抑えて言った。
「門の配置に随分ばらつきがあるなあ…。逃げるなら馬のある方に逃げそうだけど、此処は四人と手薄な気がする。大丈夫かなあ…」
次男が言い返す。
「南門なんか三人だぜ?四人ならまだましだろ」
三男は
「まあ確かに」
と言って笑った。
真剣な表情の長男が、やっとまともに口を開いた。
「火計を使うなら幾ら街から離れていても、小高い場所だし、役人が来るのは時間の問題だ。トロトロしてたら、敵に囲まれるぞ。馬なら館まで、大した時間は掛からんからな」
それを聞き、次男と三男は黙った。
建てかけの館…南西にガラス貼りの部屋が三部屋あり、その為建築中の屋敷に見える事から、そう呼ばれている。
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