第9章「集わぬ参加者」その6

1/1
前へ
/207ページ
次へ

第9章「集わぬ参加者」その6

fc2e16ec-0e65-4b63-946a-a7f7c3367912 「何してるの?羽塚くん」 右隣で声が聞こえた。 「何で残ったんだ?」 「いや、あなたがいたから」 ドキッとした。 入場門の二つの柱が教室に持ってくるまでの間、 僕は平木と話すことにした、いや、話したかった。 「なぁ、平木」 「何?」 「どうやったら、授業中に関係ないことができるんだ?」 「僕は怖いんだ。恥をかくことも、悪者になることも」 「私はやりたいことをやりたい。 理由なんて、それで十分なのよ」 「私は世の中ってつまらないと思うの。だから、勉強するの、本を読むの」 話に引き込まれた。 「羽塚くんがこれから何をしたい?」 その綺麗な強い目で、僕を見ている。 何も言葉が思いつかない。つっかえているわけではない。 本当に何も思い浮かばないのだ。 「あなたは、何のために生まれてきたの?」 そう言って、平木はみんなの手伝いをしていた。 僕は驚いていた、そして、みんなも驚いていた。 なぜなら、平木がそんなことをする人間だとは、 今までの行動からは読めなかったからだ。 でも、みんなに話しかけられている。 あまり反応している様子はないが、とけこんでいるように見える。 傍からみても、平木は誰もが畏敬の念を抱く気持ちを抱かれている。 しかし、そこに、意外な親しみを含まれ、もう無敵艦隊になったように思えた。 なら、一人の僕は、川に流れる笹舟なのかもしれない。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加