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第9章「集わぬ参加者」その10
平木と話をしたかった。
教室の扉を開けると、もう半分くらいは終わっているようだった。
平木は相変わらず、たくさんの人に囲まれている。
「平木、先生が呼んでいるよ」
この状況で話しかけるのは億劫だったが、気をつかうのも何だか癪だった。
「わかった」
そう言って、長い黒髪をなびかせながら、教室を去っていった。
みんな、彼女について、楽しそうに話している。
何だか最初に平木が僕にした仕打ちを話してやろうかと思った。
馬鹿だな、僕は。
彼女には、僕の右隣の他にも居場所があって、あれほどの容姿と才能があれば、
そりゃどんなコミュニティでもやっていけるのだ。
それが当たり前で、平平凡凡たることなんだ。
無意識のうちに平木に貸しがあると思っているのかもしれない。
心のどこかで見下していたのかもしれない、彼女にはコミュ力がないと。
でも、それは僕なんだ。
自分にコミュ力がないから、それを憧れている平木に映し出して、
自分の欠点を平木のものと思い込んでいたんだと思う。
「羽塚、ちょっといいか?」
昨日と同様、やることもないまま、
みんなが頑張っているのをばれないように見ていると、誰かが話しかけてきた。
振り向くと、小西だった。
こいつはサッカー部所属で、かつて、平木に日直の仕事を押し付けたクズ野郎だ。
特に仲がいいわけじゃないが、こいつだけは自分より下であると認識してしまう。
「お前、西山のこと狙ってるのか?」
最近は驚くことばかりだったが、これほどの衝撃は初めてだ。
一瞬、小西と目を合わせることができなかった。
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