闇の章 光る君と呼ばれて 1

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闇の章 光る君と呼ばれて 1

「お久しぶりです。父上……長い間、お目にかかりたいと願っておりました」  感極まった顔で、お前は私を見つめる。 「お前が洋月の君(ようげつのきみ)か」 「……はい」  躊躇いがちに微笑みをたたえた洋月の君は、まばゆいばかりの若干15歳。  色白な透明感のある滑らかな肌。  私に久しぶりに会えたことの喜びからか上気する桜貝のような色の頬。  苺を摘んだような、甘く美味しそうな唇。  雨に濡れたように輝く漆黒の黒い髪。  静かな湖面を映すような、潤んだ瞳。  私を置いてこの世を去った月夜の更衣の生き写しのようで、思わず息を呑んだ。そしてしばらく忘れていた私を置いてこの世を足早に去ったことへの憎しみが、湧き上がってきてしまった。  この穢れなき息子の顔を見ていると、何故だか無性に腹が立ってしまう。  もともと身体が弱い月夜の更衣は、お前を無理に産んだから体調を崩し、早くに亡くなる羽目になったのだ!憎しみから遠ざけていた息子が、ここまで母にそっくりに成長しているとは、なんとも恨めしい。お前のせいで私は愛する人を永遠に手放したのだ!無垢な目で見つめているお前とは裏腹に、腹の中は煮えくり返っていた。  私は本当の父ではない。  お前のせいで愛する人を失ったという恨みを持つ男でしかない。  酷なことだが……そんな感情しか湧き上がってこなかった。  どうやらずっと頭の中で考えてきた事を、いよいよ実行する時が来たようだ。悪いが義理の父としての情などない。しいて言えば「光る君」と宮中までうわさが届くほどの美貌を持つ容姿に育ったことだけは感謝する。  皇子から臣下へ降下させたのもこのためだったのだ。お前を利用させてもらう!そのお前の麗しい顔なら、どんな 女子も虜に出来るだろう。まずはその道をしっかりと教え込まなければならぬな。まだ何も知らない穢れなき顔をしているお前に。  ── お前がこれから歩む道は非情な世界だ。そしてとても険しい ──  
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