第2章 最高の仲間達

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4月27日(日曜日) 今日は詩音が呼び掛けた骨髄バンクの希望者が採血をしに講堂に集まる日となっている。 私達3人の坊主頭による話題も手伝って、親の同意を得れた人は、200人を超えていた。中には中等部からの希望者も多く、予想以上に参加してくれたと思っていたが、この企画を提案した詩音は、全員参加するものだと思っていたらしく、少し不服だった。 「ねえ、彩香?」 「何、詩音」 「皆んな薄情よね。まさかこんなに少ないなんて思わなかったわ」  「ネットで見たけど、骨髄を提供する人でも、感染症を起こして重症になった人もいるみたいだから、強制する事は難しいわよ。 これだけ参加してくれたんだから喜ばなくちゃ」 「そうだけど・・・ でも絶対に少ないわよ!」 「詩音、私達も採血しに行きましょう」 怒っている詩音をと美希と一緒に採血の列に並んだ。 これだけの生徒達の採血も、10人以上来てくれた医療スタッフにより、スムーズに生徒達の採血は終わった。 詩音「彩香も美希も手伝ってくれてありがとうね。生徒会だけではとても手が回らなかったわ。」 美希「これぐらいだったら全然大丈夫よ。」 詩音「ところで奈緒ちゃんは?」 「野球部の練習だと思うよ。」 詩音「えっ奈緒ちゃん野球やるの?」 「奈緒はマネージャーだよ。ねえ美希」 美希が話すなと言う表情でこっちを見る。 ? 詩音「へえ〜そうなんだ。野球かあ。 奈緒が好きだったら私も覚えようかな〜」 「奈緒も野球は、何もわかって無いわよ。春休みの間も必死に勉強してたもん。」 詩音「それで何で野球部のマネージャーに?」 私は勝利の事、耕太の事を詩音に話した。 美希も知らなかった事なので、 美希「そんな事になってたんだ。」 詩音「何かそれも切ないね。」 「でも奈緒が自分で決めた道だから」 美希「もう講堂に私達しかいないよ! 3人は慌てて講堂を出て行った。 しかし、莉乃の為に参加してくれた200人の血液も、適合者がいなかった事を数日後に報告されたのであった。 その頃、心城学園では 坊主頭の2人の選手と1人の女子マネージャーの姿があった。 (奈緒) 1年生が順番でやっていた、先輩達のユニフォームの洗濯や部室の掃除、時間がある時はノックの時などに球拾いをやっている。 ノックが終わり、打撃練習の準備をするため、監督とコーチがグランドを出てベンチに座る。 私は2人に冷たい麦茶を差し出す。 「どうぞ、冷たい麦茶です。」 監督「ありがとう。やっぱり女子が居ると違いますね。なあ流君。」 流コーチは、何やらよそよそしい。 「コーチ何がありましたか?」 「いや、悪いから聞かない様にしていたんだけど、飯島さんは何が強い薬でも飲んでるのかなと気になって」 「あ〜この事ですか」 と頭を軽く叩きながら言った。 見てはいけないと思ったのか、下を向いて 「うん」 「実はその強い薬を使っている友達が、髪の毛が抜けて恥ずかしがっていたので、同じ髪型にしたんです。 あれ?これも髪型って言うのかな?」 監督「じゃあ、あいつらもそうなのか?」 とグランド端で投球練習を行なっている勝利と耕太を指差した。 「はい」 コーチ「男子なら分かるけど、女子の君が頭を丸めるのは・・・」 「いいんですよ。私は一人に見てもらえれば」 コーチ「秋山君は幸せだね。そんな彼女をもって」 ? 「私、こう・・秋山君とは付き合って無いですよ」 監督「そうだったのか!俺もてっきり二人は付き合ってるのかと思ったよ。」 「いえいえ、私が好きなのは、もう一人の方です。片想いですけどね。」 コーチ「そうだったんだ。確か3人共同じ中学校だったよね。 じゃあ中学の時の友達が病気になったの?」 「勝利の彼女になる人が病気になったんですよ。」 と笑顔で答えた。 監督「何か切ない話だな。君も可愛いし性格もいいのに、新しい恋を目指したら?」 「はい。新しい恋をする為に、甲子園で優勝するんです。この10年間の恋愛を一生忘れたくないので、小さい頃からの勝利の夢を一緒に叶えたいんです。」 何で私、このおじさん達に恋話をしてるんだろう? ! コーチの目に涙が 「絶対に甲子園行こうな」 すると監督が、 「流君、行くだけではダメだ。優勝しないと優勝! でも、君の想いを聞いて安心したよ。 俺達大人は、学生が恋に対して軽い気持ちでいる様な気がしていたんだけど、君の想いを聞いて、恋は昔も今もまったく変わっていないんだと確信したよ。なあ、流君」 「その照れ隠しに僕を呼ぶのは止めて下さいよ。」 と3人で笑った。 すると、監督とコーチが立ち上がり 「さあ甲子園で優勝するぞ!」 と言って、グラウンドに意気揚々と入って行った。 練習終了後、3人での帰り道 耕太「なあ、奈緒。何コーチと監督と話してんだよ。あれから鬼の様にしごかれたんだぞ!」 思わず笑ってしまう、そして 「ナイショ!」
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