第1章 高校入学

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翌日 教室に入ると館内放送が流れる。 「8:20より緊急生徒集会を開催いたします。 生徒は講堂に集まって下さい」 緊急集会? この学校は、こんな事もあるんだ。 みんなブツブツ言いながら講堂に足を運んだ。 講堂には中等部の生徒も来ているので、こんなに広い講堂が物凄く狭く感じる。 8:20 壇上の中央にマイクスタンドが置いてあり、そのマイクスタンドに向かって歩く詩音の姿が目に入った。 そしてマイクを握り 「生徒会長の菱沼詩音です。朝からお集まり頂きありがとうございます。 今日は皆様にお願いがあって、お集まり頂きました。 本校の生徒で白血病を患い、ドナーが見つからない生徒がいます。 本校の生徒である以上、どうしても助けたいのです。 かなり確率は低いのですが、骨髄提供をしていただける方がいらしたら、検査を受けていただきたい。 検査は採血だけですので、痛くはありません。 これから配る用紙に記載の上、担任に提出して下さい。 採血は4月27日の日曜日、中間テストが終わる次の日に、ここで行います。 どうか沢山の参加をお願いします。」 それだけ言うと壇上から姿を消した。 用紙が配られる。 同意書と書かれた紙が配られる。 それにしても、この行動力は凄い! 私達は教室に戻るが、同じクラスの生徒も賛否両論で意見が分かれていた。 そして授業が終わると、美希がやってくる。 「帰ろう!今日も何処か行くの?」 玄関に向かいながら話を続ける。 「今日はビラ配りよ」 「ビラ?」 「うん。骨髄バンクの登録を薦めるビラよ」 「何だか面白そうね。私もやる」 「ありがたいけど、意外と厳しいわよ」 「大丈夫よ。配るだけでしょ」 「体力では無くて、心が」 「こころ?」 すると後ろから 「私もやるわ」 詩音だ。 そして、今日配る予定の池袋でビラを配り始めた。 さすがに池女の生徒はビラを受け取ってくれる。 しかし 美希「うちの生徒ばかりで、一般の人は、受け取ってくれないわ。」 詩音「本当に薄情ね」 美希「確かにちょっと心が折れそうになるわ」 そんな話をしていると奈緒がやってきた。 「ごめんね。遅れちゃった。あれ?凄く減ってる」 「うちの生徒が持ってってくれたけど、相変わらず一般の人は、少しだけよ」 「そっか、でもそうやって持っていってくれる人は興味があるって事だもんね。 きっと登録者が増えるよ」 「奈緒は、ここのところポジティブな性格に変わってきたわね。」 「うん。何か吹っ切れた思いがするの」 「そうなんだ。」 「それとね、4月20日の日曜日に勝利と耕太を連れて病院に行こうと思うの」 怪訝そうな表情を浮かべて 詩音「莉乃が嫌がってたわよ。」 「きっと大丈夫」 と言って奈緒が微笑んだ。 そしてビラ配りを終えた。 詩音が照れ臭そうに 「ねえ、メアドの交換してもらってもいいかしら?」 奈緒と私は 「勿論いいわ!」 美希も 「私でいいの?」 と、おっかなびっくりしながら言うと、詩音が笑顔で 「勿論いいわ」 「もしかして詩音って、メアド交換した人、あまりいないでしょ?」 と私が聞くと 詩音が小さい声で 「莉乃だけよ」 圧倒的な存在感で、皆んなが萎縮していたのだと思った。 「もしかしてLINEも、した事なかったりして」 と冗談でいうと 気まずそうに詩音が頷いた。 奈緒「じゃあ私が教えてあげる」 詩音「あ・ありがとう」 と詩音に皆んなでLINEのやり方を教えた。 そして家に着くと、早速詩音から、LINEが届く。 可愛い熊のキャラが「今日はありがとう」 と言っているスタンプだった。 熊かあ、祐輔にもらった熊のぬいぐるみを抱きながら 「祐輔は頑張ってるかな」
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