第1章 高校入学

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第1章 高校入学

4月7日心城学園の入学式 幼馴染の耕太と奈緒と清々しい気分で迎える筈だった入学式も、想いを寄せている莉乃が、急性白血病を患った事で、清々しい気分は影を潜めていた。 ただ心城学園は、神田にある高校なので、僕が住む亀戸からは御茶ノ水駅で降りて歩ける距離である。 御茶ノ水は、莉乃の自宅があり、3月の後半に急性白血病と確定診断され、今は化学療法(抗癌剤治療)を行なっているT・I大学病院も御茶ノ水駅に近い。 僕の幼稚園の時からの幼馴染は、僕を含めて5人いて、莉乃が白血病を疑われた時も、骨髄移植を見据え、骨髄バンク登録を募集するチラシを作って街で配ってくれたり、これから野球漬けになる男3人に変わり、彩香と奈緒がその活動を続けてくれている。 自分の事のように一生懸命に取り組んでくれる幼馴染の存在が、頼もしく、そして嬉しかった。 心城学園には僕と耕太、奈緒が入学し、祐輔は西東京地区の野球名門校である稲川実業で甲子園を目指しており、彩香は莉乃と同じ名門女子校の池岡女学園に入学し、医師になるために医学部を目指す。 幼馴染5人組も其々の道に歩み始めた。 僕は入学式を終えて教室に戻ると、また奈緒と同じクラスであった。そして五十音順に並んだ席順も、男子のア行の名字が少なくて、横の席に奈緒が座っている。 「勝利、また横の席だね。」 「んだね」 「何それ?もう少し嬉しそうにしなさいよ!」 「いや高校に来た新鮮さが薄れる。」 「もっと可愛い子が良かった?」 「んだな」 「莉乃ちゃんに報告しようっと」 「それだけは止めてください。」 「よろしい。では、奈緒が横で良かったと言いなさい!」 「奈緒が横で良かった。」 奈緒が顔を赤くして照れている。 「お前が言わせといて、照れるなよ!」 中学3年の延長の会話が続いた。 「ところで、野球部のマネージャーになるって言ってたけど、野球知ってるのかよ?」 すると野球入門と書かれた本を見せびらかしながら 「今、勉強中よ。試験勉強より一生懸命に勉強しているんだから。任せて 目指せ甲子園!」 そんな会話をしていると、後ろの席の長身の男が声を掛けて来た。 「えっ君も野球やってるの?」 「うん」 「俺もやってるんだよ。中学の時はファーストだったけど、この高校の投手だったら、俺が投げた方が良いと思うから、投手を希望しようと思ってたんだ。」 「そうなんだ。それにして背が高いね。身長どれくらいあるの?」 「もうすぐ190cmに届くんだよ。 それにしても君はまた背が低いね。セカンド希望?」 すると奈緒が怒りながら 「野球は身長のスポーツでは無いですよ。ちなみに勝利はピッチャーです。 そして、全国制覇するピッチャーよ!」 僕は慌てて奈緒の口を塞ぐ 「奈緒!」 「ごめんね。気にしないで。僕は小野勝利。これからもよろしくお願いします。」 「俺は加藤達也。よろしく」 と握手をした。 「それと今年は野球の推薦入学があったんだって言ってたぞ。ここは野球推薦をしない高校なのに、相当凄い選手が入るのか噂になってるよ。もしそこに凄い投手がいたらピッチャーやめてファーストにしようと思ってるんだ。」 奈緒の表情が変わる また奈緒が暴走しないように、話さないように顔の表情で伝えた。 奈緒は僕の表情を見て、我慢して話すのをやめた。 ホームルームが終わり、僕は野球部に向かおうとすると加藤が、 「まだ部活申請は後だぞ。今部活に行くのは推薦入学者だけだぞ!」 「うん。黙っててごめんね。僕、推薦入学者なんだ」 「えっ!君が? えっと・・投手?」 「うん。ごめんね。でも僕は実績も無いから、ピッチャーを諦める必要は無いと思うよ。」 と言って、教室を出てグラウンドに向かった。
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