第二章 激戦

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沖田は彩の刀に目を止めた。 「それは菊一文字ではないか、なぜ持っている」 私は狼狽した。 「あっ、これはあやかしの親玉退治の為にお借りしています」 彩は頭を下げた。 「そうか、それでは親玉を倒したら、私に刀を返してもらえるか」 「はい、当然です」 「初めから、そう言えば貸してあげたのに」 「すみません」 私は大汗をかいた。 その時、上の方から何か落ちてきた。 ズシーン 凄まじい大音響がした。 10メートルは有る巨大な岩が落ち来て地響きを立てた。 土が舞い上がる。 門にも落ちて、門が押し潰された。 後から後から、いくつも周りに落ちてきた。 狐侍達は、肝をつぷしたのか一斉に逃げ出した。 「悪いが、これでは歯が立たない、一番隊は引き上げます」 沖田さんは隊士を率いて北に走り去った。 次々に巨大な岩が落ちてくる。 四人は踏み留まる。 「これは妖術だな、みんな騙されている」 五助が言った。 すると数百のあやかしが一斉に襲ってきた。 鬼や土蜘蛛、それに見たことの無い奴ばかりだ。 十藏は手当たり次第斬りまくる。 バタバタと、あやかしが倒れて行く。 私も菊一文字を抜く。 周りから襲い来る鬼達を一振りで全部倒す。 五助は鳥居の上に乗り矢を射た。 すると与作さんが鳥居の上に飛んだ。 次の瞬間、五助を斬り倒した。 五助が落ちてきたのを、私は受け止めた。 「与作さん、何をする」 与作は笑いながら姿を変えた。 「あっ」 九尾の狐に、間違いない。 「与作は九尾の狐だったのか、騙したな」 私が叫ぶとニヤニヤしていた。 「わらわは、玉藻前(たまものまえ)」 「妖術も、お前の仕業か」 「ホホホ」 九尾の狐が、尻尾を振ると、凄まじい衝撃波が飛んで来た。 鬼達を吹き飛ばした。 十藏がさけんだ。 「これではやられる、ひとまず稲荷山まで逃げましょう」 「わかった」 私と十藏は、襲い来るあやかし達を斬りながら走る。 十藏が居るので雪女にはなれない。 走り続けて、追って来るあやかしを斬りまくる。 彩が振り返ると死人のようなゾンビ達が数人襲いかかって来た。 刀を鞘に納めていた十蔵が、居合い技を出した。 三人のゾンビが一瞬で斬られて倒れた。 「凄い居合いですね」 「いや、私の居合いなど大山様には及ばないです」 稲荷山の手前で、追って来るあやかしは居なくなった。 「彩殿、数百は斬ったようですな」 「うん、とにかく薩摩藩邸に急ごう、五助の手当てをしないと」 「はっ」 私達は錦小路の薩摩藩邸を目指して走った。
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