30人が本棚に入れています
本棚に追加
彩は一人で新選組屯所に向かう。
門番に安倍与作ですと告げると、剣術の稽古をしている沖田が彩を見付けた。
「安倍さん、お久しぶりです」
笑顔で額の汗を手拭いで吹きながら寄ってきた。
この前、斬られた恨みが有るが、私も笑顔で挨拶した。
「沖田さん、あやかしを斬ったそうですね」
沖田は頭を掻きながら言った。
「いや、殺すつもりはなかったので本気では斬りませんでした、しかし逃げられてしまいました」
ハハハと笑った。
そうなんだ、確かに沖田なら一撃で私を倒せたはずだ、危なかった。
「今日は、何かご用ですか」
「はい、近藤局長様にお会いしたいです、お話が有ります」
「局長なら、在宅です、ご案内しましょう」
屯所の奥の局長の居間に案内された。
土方も居た。
「近藤局長殿、土方殿、お久しぶりです」
二人は会釈した。
「安倍さん、今日は何用ですかな」
近藤局長は笑顔だ。
「はい、実はお願いしたい事が有ります」
私は近藤局長があやかしの結界を破って、安倍晴明が閉じ込めた、あやかしが京に散ったこと、本拠地は伏見城跡だと説明した。
土方が私を睨みながら言った。
「それで、何をしろと」
私は汗が出るほど緊張した。
「はい、私たち四人では少なすぎます、あやかしは二百は下りません」
「そのような事に隊士は出せん、今は一人でも減らしたくはない」
局長が口を開いた。
「歳さん、良いではないか、ここは沖田の一番隊をだそう」
沖田も頷いた。
「ありがとうございます、一番隊の方は何人ですか」
「10人です」
沖田は即答した。
たった10人かぁー。
私は落ち込んだ。
私は沖田さんと、一番隊を連れて伏見に向かう。
途中、伏見稲荷前で、十藏と五助さん、与作さんと合流した。
「合わせて15人です」
と私が報告すると。
与作さんは笑顔で答えた。
「伏見稲荷の巫女に、頼んだら稲荷警護の狐侍を貸してくれた」
「狐侍ですか?」
「そうだ、最強の狐侍50人だ」
「それなら、何とかなりそうですね」
普通の侍姿の狐侍達を従えて伏見に向かう。
御香宮の境内で腹ごしらえや戦闘準備をして夜を待つことにした。
「五助さんには、嫁さんがいる、外れても良いですよ」
「いや、おみよは一膳飯屋を始めました、私が死んでも大丈夫です」
「そうなんですね」
五助さんの性格なら、そうだろうな。
そして辺りは薄暗くなり、私たちは用意した松明に火をつけた。
伏見城跡は、すぐそこだ。
私は腰に差した菊一文字の鞘を握りしめた。
最初のコメントを投稿しよう!