第二章 激戦

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祭りが有るのか東福寺辺りは賑やかだ、笛や太鼓の音、大勢の人の歓声が聞こえる。 仕方なく東寺周りで錦の薩摩藩邸に行く事にした。 「五助、大丈夫か」 私が聞くと五助が小さな声で答えた。 「はい、大丈夫です、すみません」 十藏は先に行かせた、医師の良順を呼ばないといけない。 十藏は、北に向け駆けた。 私は五助を抱えて、ひたすら走る。 九条通りを進み、東寺の東の通りを北に向かう。 そこで、何か物凄い気を感じた。 私は五助を地面に降ろした。 すかさず、何かが凄い速さで飛んで来た。 それを避けると、別のが飛んでくる。 「金剛杵だ」 それは古代インドの武器だ。 後から後から襲ってくる、刀を抜く暇も雪女になる暇も無い。 私は土塀に背中から当たる。 上と左右、前からも二個飛んでくる。 斜めに転びながら菊一文字を抜いた。 前から来る二個の金剛杵を叩き落とす、すると攻撃は止み、金剛杵は前の方に飛んで行く。 そこには若い男が立っていた、仏像が着ているような服装だ。 「なかなかやるな」 金剛杵を手に持っている。 よく見ると腕が六本有る。 思い出した、阿修羅にそっくりだ。 「阿修羅様ですか」 「そうだ、よく知っているな」 「阿修羅様が、私に何かご用でしょうか」 阿修羅は空に向けて金剛杵を投げた。 ギャッ 鵺(ぬえ)のような鳥が落ちてきた。 「私をつけて来たようですね、ありがとうございます」 「うむ、雪女があやかし退治か」 「はい、成り行きから、こうなりました」 「まあ良い、五助は」 「はい、怪我をしています、今から医師の治療を受けに行きます」 阿修羅は怒った顔になった。 「五助は、私の子供だ」 「そうでございますか、知らずに怪我をさせてしまいました、申し訳ありません」 「奴は不死身だから死ぬ事はない、しかしあやかし退治とかに巻き込まぬようにしてくれ」 「はい、わかりました」 阿修羅は五助を抱えた。 「では、連れて行く」 私は平伏した。 「代わりに、これをやろう」 私の前に金剛杵を差し出した。 「これは二千年は使っているうちに、立派な精霊になった」 すると金剛杵は、みるみるうちに大きくなり、若い町娘になった。 阿修羅は消えていた。 「彩さま、今からお仕え致します、シュミーと申します」 「そ、そうか、よろしく頼む」 「はい」 「うん、では行こうか」 二人は錦小路に向かう。
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