第三章 新たな敵

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第三章 新たな敵

翌日の朝に、一膳飯屋の隣の家を借りた。 (よろず相談処)の看板を出した。 彩は、何とかなるだろうと思った。 一膳飯屋に侍が訪ねてきた。 「彩殿は、ご在宅でしょうか」 おみよが応対に出た。 「どちら様ですか」 「空無と申します」 と、頭を下げた。 (空無って、お坊様みたいな名前) 「こちらにどうぞ」 おみよは、空無を、隣に案内した。 「彩さん、お客様よ」 私は入り口の土間に腰かけていた。 入って来た侍は、沖田さんだった。 「沖田さん、病気は大丈夫ですか」 「いや、私は沖田の双子の弟の空無です」 「瓜二つですね」 「はい、実は兄から手紙をもらいました」 「お手紙を」 空無は懐から手紙を出した。 私は手紙を広げたが、古文書だ、読めない。 「何と書かれていますか」 「内容は、京の彩さんの手伝いをしてほしいとの事です」 「そうなんですね、ありがとうございます」 (沖田さんは、私を気にかけていたんだ) 「私は赤子の時に柳生の里に養子に出されましたが、15才からは高野山に送られて密教の秘術や陰陽術を習いました、いまは武士に戻りました、沖田菊次郎です」 「ありがとうございます、助かります、よろしくお願い致します」 彩は頭を下げた。 沖田も頭を下げた。 「そうだ、お約束通りに、お借りしていた菊一文字をお返し致します」 彩は菊一文字を差し出した。 「ありがとうございます、代わりにこれを」 沖田も腰の刀を差し出した。 「この刀は」 安倍晴明の持っていた日月護身剣を、真似て密教僧が作りました。 「そんな大切な物を」 「かまいません、お持ちください」 「ありがとうございます」 沖田さんを五助さんと、シュミー改め、小雪に紹介した。 小雪は一膳飯屋の手伝いをしている。 「頼もしい方ですね」 「よろしくお願いします」 二人も気にいったようだ。 私と沖田さんと話していたら、お客さんが入って来た。 お坊様だ。 「中にお入りください、お話を伺いましょう」 「はい、私は一条界隈を取り仕切る町年寄の喜平ですが、実は一条戻り橋に鬼女が出ます」 「鬼女ですか」 「はい、夜半に現れ刀を抜いて金を出せと迫ります」 「追い剥ぎですか」 「はい、恐れて誰も通らなくなると、近くの商人の店に現れて金を出せと」 「それはお困りですね、わかりました引き受けましょう」 「ありがとうございます、では、これを」 包みを差し出した。 私が受けとると。 (重い、五両くらいか) 「では、よろしくお願い致します」 喜平は、頭を下げて帰った。 深夜を待ち、とりあえず私と沖田さんで出掛けた。 しばらく歩くと一条橋に着いた。 「ここが一条戻り橋ですね」 「ほう、安倍晴明が式神を隠した橋ですね」 その時、一条橋にぼうっと霧が現れたが、だんだん鬼女の姿になった。
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