第三章 新たな敵

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鬼女は、腰に刀を差している。 「沖田さん、あの刀は本物ですか」 「おそらく、なまくら刀ですね」 鬼女が怒鳴る。 「何をごちゃごちゃ話している、私が怖くないか」 言うなり彩に近より刀を抜く。 「金を出せ」 「あやかしに金が要るのか、何に遣う」 「うるさい、斬るぞ」 鬼女が、凄む。 彩が日月護身剣を抜き打ちで、鬼女の刀を弾くと、刀は真っぷたつになり、先は飛んで行く。 「おのれ」 鬼女は彩に襲いかかる。 沖田が、手で密教の九字を切る。 (九字はあやかしを切る威力が有ると言われる) ぎゃあ 鬼女は、橋に落ちた。 さらに沖田が、金縛りの呪文を唱える。 (わりと弱かった) 彩が鬼女に聞いた。 「何故、金が要るのか」 「陰陽師の土御門家の秘伝書を手にいれた僧に利用されています、光星です」 「式神にされたのか」 「はい」 「許せん、そいつは何処に居る」 「この近くにいますが剣客崩れの用心棒がたくさんいます」 「大丈夫だ、一緒に行こう」 光星は、五人の用心棒に囲まれて小判を数えている。 「これは今月分の金どす」 用心棒たちは金を受けとる。 そこに鬼女が表木戸から、すうっと入って来た。 さすがの用心棒たちも、びっくりした。 「お前、金だけ置いていけ、入って来るな」 鬼女は木戸のつっかえ棒を外し戸を開けた。 スッと彩と沖田が入って来る。 「何だ、お前達は」 「悪者退治だ」 彩は、刀を抜き、神速で部屋に駆け上がり、用心棒二人を峰打ちで倒した。 あと二人は沖田が合気術で投げ飛ばす。 土間に用心棒二人が並び伸びていた。 残る一人は、恐れて裏から逃げた。 光星は、大笑いした。 「お前は玉藻前を倒した雪女だな」 「知らん」 彩がとぼけると、光星の着物がバリバリと破れて、体が倍くらいになった。 「あやかしか」 沖田が呟いた。 「金霊(かねだま)だな」 「そうだ、守銭奴に変わった金霊だ」 小判色の金属が立っている。 小判に手足が生えていた。 金霊は、小判を、投げつけてきた。 「痛い」 彩は叫びながら、金霊に袈裟斬りを出した。 ガチン 刀が弾かれた。 「沖田さん刀が効かない」 「私がやる」 沖田は腰から何か引き抜いた。 「あっ金剛杵、小雪か」 沖田は金剛杵を、投げた。 ガツン 重い金属のぶつかる音がした。 金霊の小判が欠けた。 ガツン、ガツン 音がする度に体が欠ける。 「痛い、これはかなわん、参りました」 金霊は土下座になる。 「お助けください」 「では、鬼女を放せ、盗んだ金も返すか」 「はい、承知しました」 金霊は光星の姿になり頭を下げた。 金剛杵は小雪になった。 「一両欲しい」 小判に、手を伸ばす小雪の手を叩いた。 「ダメ」 光星が一両、小雪に渡した。 「お駄賃、これは葬儀で稼いだ金です」 「そうか、小雪良かったな」 「ありがとう」 三人は笑いながら家に帰った。
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